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当研究の目的は、素粒子理論において多大の関心を持って研究されてきた超対称性場の理論の非摂動論的定式化、およびそれに基づいた理論のダイナミクスの解明である。場の理論の非摂動論的定式化として最も成功しているものは時空格子に基づく格子場の理論であり、当研究でも超対称性理論の格子による定式化を想定している。これは大変難しいことが歴史的にも認識されてきた問題である。この困難の根本的な原因は、超対称性理論を定義する超対称性代数が無限小並進を含む一方、時空の格子構造が無限小並進と相容れないことにある。この格子場の理論の欠点は、超対称性理論に限らず、並進対称性や回転対称性を持った通常の場の理論の格子定式化でも問題となる。特に、並進対称性に付随したネーター電流である「エネルギー運動量テンソル」を格子場の理論でいかに構成するかは、超対称性理論に留まらない広い視点で重要な、かつ難しい問題である。この認識から、当年度は昨年度に引き続き格子理論におけるグラディエント・フローという手法を用いたエネルギー運動量テンソルの構成とその応用の研究に精力的に取り組んだ。具体的な成果としては、2次元のラージN極限において可解な模型（グロス・ヌヴー模型）の格子定式化におけるエネルギー運動量テンソルをグラディエント・フローに基づいて構成し、その非摂動論的な解を用いて連続極限でエネルギー運動量テンソルが保存則を満たすことを示した。また、エネルギー運動量テンソルの有限温度での期待値が熱力学量を正しく再現することを示した。また、グラディエント・フローに基づくエネルギー運動量テンソルの構成に必要な小フロー時間展開の摂動計算に対する極めて有効な方法（背景場の方法）を考案し、１ループ計算におけるその有用性を示した。またこれらと関連する研究成果として、グラディエント・フローに基づくカイラルカレントや擬スカラーの構成法なども与えた。
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