研究課題/領域番号 |
23540332
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研究機関 | 岡山光量子科学研究所 |
研究代表者 |
村上 公一 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 研究員 (00400698)
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研究分担者 |
二宮 正夫 岡山光量子科学研究所, その他部局等, その他 (40198536)
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キーワード | 素粒子論 / 弦理論 / 場の理論 / 素粒子論的宇宙論 |
研究概要 |
当該年度においては、まず、村上は、光円錐ゲージのNSR形式の超対称な閉弦の場の理論の高次ループでのcontact項の問題を次元正則化によって解決することを目標として掲げた。これに基づいて、本年度は研究を進め、まず、非臨界次元のボソン的な弦の場の理論において、高次ループの振る舞いを解析した。特に、昨年度に報告した結果に一部不十分な点があったことを見出し、これを修正し、よりすっきりとした理解を得た。現在、この解析をまとめて、研究論文を作成中である。 また、村上は、筑波大学の石橋延幸氏と共著で、「減の場の理論--弦理論のより深い理解のために」と題する本を著し、サイエンス社から出版された。この本において、Witten型の弦の場の理論において、散乱振幅の計算法、超対称化、古典解の構成等の近年までの発展を取り扱った。また、Joining-Splitting型の相互作用を持つ、光円錐ゲージの弦の場の理論、HIKKO型の理論、covariantized light-cone弦の場の理論を紹介した。特に光円錐ゲージの弦の場の理論の取り扱いについては、本科研費の研究において得た成果を一部紹介した。 研究分担者の二宮は、まず、昨年度に引き続き、弦の場の理論を離散化の方法によって定式化するという新機軸をさらに追及した。当該年度においては、特に第一量子化において、正しい質量スペクトラムを、この定式化の枠組みにおいて導くことができることを示した。 また、二宮は、宇宙論の研究においては、インフラトンを用いない宇宙初期の揺らぎの研究をさらに進めた。当該年度では、物質場の量子論的な効果に注目して、物質場のback-reactionを取り入れたEinstein方程式を初期宇宙において考察した。現在この数値解・解析的解を探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超弦の場の理論の研究においては、非臨界次元の光円錐ゲージの弦の場の理論の高次ループの解析において進展があった。この解析の超対称化については少し達成度は計画に比べて遅れているが、反面、ゲージ不変な開弦の場の理論におけるcontact項の問題の研究については計画を前倒しにして進んでいる。また、これまでの研究成果を一部踏まえた図書を出版できたことは、大きな成果と考えている。 また、離散化の方法を用いた弦の場の理論の新しい定式化についても、具体化が進んでいる。また宇宙論への応用も、現在の観測の進展を踏まえて研究が進められている。以上の状況を総合的に勘案して、達成度の区分を「2」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から引き続き、実施順序に若干の前後があるものの、当初計画として掲げた方針に沿って研究を進めることができていると考えている。今後も、現在の研究体制を維持して、さらに研究計画に掲げた項目の達成を目指していきたい。具体的には、現在ボソン的な場合にうまくいくことがわかった、高次ループでの次元正則化の処方をいよいよ超対称化することを目指す。特に、最近になって、以前から問題になっていた超対称な弦の散乱振幅における、超モジュライ空間が、再び考え直される機運が出てきている。超弦の場の理論は、まさにこの問題に解答を与えると期待される枠組みであるので、本研究を進める意義は、さらに高まっているといえる。このような最近の親展を踏まえて、研究を進めていきたいと考えている。 また、宇宙論においては、現在著しく観測が進歩しており、これを踏まえた理論的研究の意義は年々大きくなっている。本研究でも基本理論的な観点からこのような観測結果を踏まえた研究を進展させていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果を踏まえて、積極的に議論や発表の場を求めていきたいと考えている。そこで、次年度は研究旅費を多く使用することを計画している。また、引き続き、書籍や計算機環境の充実に費用を当てていくことを予定している。
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