研究概要 |
最終年度に実施した研究の概要 前年度検討した研究推進方策に沿い、①液体金属中へのD3分子イオンビーム照射時に生ずるd+d協力衝突反応を用いた液体金属中のd(d,p)t反応の遮蔽エネルギーの測定、②重水及び重水素化アセトンを用いたキャビテーション核融合の探索、を実施した。①に関しては、融点が比較的低い液体In、Sn、Pb、Bi中での協力衝突d(d,p)t反応のスペクトルと収量が入射エネルギー10-60 keVの間で測定された。現在、InとSnについて解析が進み、遮蔽エネルギーは、In中では270(±50)eV、Sn中では450(±50)eVとの値が得られた。いずれも単純なThomas-Fermi電子遮蔽模型では説明できない大きな値であることが明確になった。特に興味深いのは、InとSnでは原子番号が1しか違わないのに、遮蔽エネルギーは180eVもの大きな違いがあることである。②に関しては、dd核融合からの中性子測定のため液体シンチレータの整備を行い、さらに、バックグラウンド削減のためのシールドを伴う測定系を構築した。それを用いて、超音波キャビテーション下の重水素化アセトンと流動キャビテーション下の重水(工学部祖山研との共同研究)からの中性子を探索したが、バックグラウンドレベルの中性子しか観測されず、キャビテーション核融合を生じさせるための更なる工夫が必要であることが判った。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果 液体Li超音波キャビテーション標的の重陽子ビーム照射データの詳細な運動学的解析の結果、液体Liキャビテーション内では600万度にも及ぶ高温の重陽子プラズマが生成されていることを明らかにした。D3分子ビームを用いた液体金属照射d(d,p)t反応の観測から、分子ビームに特有の反応機構(協力衝突反応)を発見し、それを用いて液体In, Sn中でのd(d,p)t反応の遮蔽エネルギーが精度良く求められた。
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