研究課題/領域番号 |
23540334
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神田 浩樹 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40321971)
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キーワード | 中間子光生成反応 / 光子標識化装置 / 光センサー |
研究概要 |
平成24年度にはこれまでに収集したπ+π-生成データの整理と解析を続行した。また光子標識化装置の性能向上に向けたコンピューターシミュレーション、新型の光センサーを用いたシンチレーション検出器の開発、テストを行った。 実験データ解析では、光子エネルギー0.65 から 1.1 GeV の範囲における重陽子を標的としたπ+π-生成反応の内、π+π-pが検出されている反応、π+π-dが検出されている反応をそれぞれ選択して解析を進めた。陽子、重陽子の粒子識別を精度良く行うためのデータの校正を丁寧に行うことで質量分解能を高めた。解析の進展には時間を要しているが着実に進んでおり、過去の実験データよりも精度の高い断面積を導出することができると考えている。 光子標識化装置の開発では、電子検出器部分を構成するすべてのシンチレーション検出器に新型の光センサーMPPCを導入する最終的な設計案をまとめた。シンチレーション検出器を2種類とし、時間測定用のアレイ型MPPCを用いた検出器と電子の位置測定用の3mm角MPPCを用いた検出器を組み合わせて使用する。時間測定用検出器は昨年度の検出器及び信号増幅回路をさらに改良し、高頻度の信号への耐性や時間分解能をさらに高めた。実際の使用条件であるヒットレート200 kHzにおいても、信号波高の低下が 5 % 以下で50 ps の時間分解能を示すなど光電子増倍管に迫る性能を得た。また、軌道測定用検出器は、今年度の研究費で購入したプリント配線基板 GN-1101-2 と接続して使用することで、高精度な位置測定に必要な多チャンネルの検出器の信号を安価に取り扱うことができるよう工夫を行った。これらの開発の結果をもとに検出器及び信号処理部の製造に取りかかった。また、光子標識化装置の電子軌道のコンピューターシミュレーションを進めて、効率的な検出器配置を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
震災で被害を受けた光子標識化装置の性能向上を図った上での復旧にエフォートが必要となり、当初目的の鉛ガラス検出器の使用に向けた架台の設計、性能評価にエフォートを割けていない。
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今後の研究の推進方策 |
東北大学電子光センターのNKS2用光子ビームラインの復旧を最優先して進める。 光子標識化装置付近の磁場計算を行い、その結果を元に電子の軌道計算を進めて最終的な検出器の配置を決定し、製作を完了させる。この時の磁場計算で得たノウハウを元に、鉛ガラス検出器の磁場シールドの計算を完了する予定である。 また、光子ビームのプロファイルモニターとして新規に用意したX線フラットパネルセンサーの性能評価試験を兵庫県立大学高度産業科学技術研究所ニュースバル放射光施設に置いて実施し、光子ビームへの検出器の応答の評価を行う。評価の結果、ビームプロファイルモニターとして十分な性能を持つ場合には、東北大学電子光センターの光子ビームラインの配置に合わせた配架装置を設計、完成させる。これらの装置を、電子光センターの加速器の復旧に合わせて設置し、光子ビームラインの復旧のためのコミッショニングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、光子標識化装置の開発の進捗状況とその他の研究資金による物品の調達状況に合わせた物品の調達により、支出金額の差が発生したために少額ではあるが生じることとなった。具体的には鉛ガラス検出器の設置に関しての作業、ビームモニターの開発研究の遅れによって、これらのために計上していた物品費および旅費、その他の経費を、プリント配線基板GN-1101-2といった、光子標識化装置用電子検出器の信号処理電子回路の調達に充てたことによる。 次年度は光子標識化装置の製作を完了させるため、光センサー MPPC の追加購入を行う。また、ニュースバル放射光施設での性能評価試験のための旅費、またX線フラットパネルセンサーのビームラインへの配架装置の設計と製作のために研究費を使用する予定である。
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