研究課題
今年度は、半導体受光素子の一種であるマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)の微弱光検出能力を評価する実験を行った。種々のMPPCの中で検出効率の最も大きい浜松ホトニクス社製のS10362-11-100C(受光面1mm×1mm、ピクセルサイズ100μm×100μm)を選択した。光源として用いたLEDの光パルス中のパルス毎の光子数は、平均光子数の周りにポアソン分布することが分かっている。そのような光パルスをMPPCに照射すると、MPPCを構成する多数のピクセルの内、光子が当たったピクセルの中で一定の確率で光電子が生成され、それが電気信号となって出力される。光子が当たった各ピクセルからの信号はMPPCの中で重ね合され、結果的に入射光子数に比例する大きさの信号として出力される。本研究では、そのような光パルスがノイズではなく信号として識別される確率(検出効率)とMPPC中の平均光電子数との関係を測定した。その結果、光パルスを97%以上の確率で検出するために必要な平均光電子数は、MPPCを室温中に置いた場合では13.4個であったが、MPPCを-40℃に冷却し、ノイズの低減を図ったところ、5.2個まで減らすことができた。平均光電子数が5.2個となるためには、入射光パルス中に光子が平均6.9個あればよく、本研究の目標である「光子10個以下」を十分満たしている。本研究期間全体を通じて、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード(APD)、マルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)の微弱光パルス検出能力の限界を調べた。APDやMPPCなどの半導体受光素子は、室温中ではノイズが大きいため、光電子増倍管ほどの高感度は得られなかったが、冷却するとノイズが減り、微弱光に対する感度が光電子増倍管を上回るようになった。最終的に、-40℃に冷却することによって、APDで平均光子数12.6個、MPPCで平均光子数6.9個あれば、100%近い検出効率で検出することができるようになった。
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Physical Review Letters
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