研究課題/領域番号 |
23540339
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村木 綏 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 名誉教授 (70013430)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 系外惑星 / ダークマター / 褐色矮星 / 岩石型系外惑星 / 暗天体 / 重力レンズ効果 |
研究概要 |
本研究は、特別推進研究経費に基づき2002年4月から実験の準備を始め、2004年12月1日NZ南島テカポ(標高1030m)に口径1.8mの大型光学望遠鏡が完成しスタートした(MOA)。 1.8m望遠鏡は、重力マイクロレンズ効果の研究に特化して作られ、限界等級22.8等星に感度のある大口径を有し、2.2平方度の広視野を持ち、CCD素子量子効率80%を有している。これは、重力マイクロレンズ効果の専用望遠鏡として世界で最も優れたシステムである。現在、重力レンズ法を使用し、この望遠鏡の優れた能力を最大限に利用し、研究目的である (1)地球型惑星を伴った太陽系外惑星の探査と(2)ダークマター問題の解明という2つの研究を継続して行っている。その結果、今年度以下(A)(B)に述べるような2つの画期的な発見がなされた。(A)2007年2月から2010年11月までの観測で検出された2,135個の重力レンズ効果イベント中に142例の二重星による重力レンズ効果イベントが含まれていた。この例を詳細に解析した結果、binary starsの質量比が0.35+-0.03であること、これは光学的手法で得られた観測結果と一致していること、および褐色矮星砂漠の存在が明らかになった。重力レンズ法を使ってbias freeでの観測に成功した。(B)望遠鏡を大マゼラン雲方向に向けて重力レンズ効果を利用して銀河ハロー中の暗天体の存在量を調べた。その結果暗天体の存在量は今まで言われてきた値より一桁少ないこと、そして褐色矮星の有意な存在量がわかった。 以上、大変大きな成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
重力レンズ法による本研究の最大の特徴は、星の大量測光にある。この検出方法は今までの天文学の手法であるトランジット法やドップラー法と異なり、自ら光を発しない暗い星を観測できる点にある。我々はこれらの暗い星を暗天体と呼んでいる。我々の毎晩観測する星の総数は、銀河中心方向と大マゼラン雲方向でそれぞれ光っている星が約5000万個、暗天体まで含めると全体で約3億個になる。このような大量の星のデータ処理を毎晩実施しているのは世界で我々MOAグループとOGLEグループ のみである。OGLE グループは暗天体を測光しておらず、両方を観測しているのはMOAグループだけである。 そしてダークマター問題を解決するため毎晩大マゼラン雲を観測した結果、baryonic dark matterがダークマターの主成分でないことを確立した。そして褐色矮星の存在量を明らかにした。さらに銀河中心方向の観測で得られた二重レンズ効果の定量的解析により、星の初期質量関数(IMF)に係る重大な情報が得られ、褐色矮星砂漠を確認した。これらの事が本研究における大きな業績である。
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今後の研究の推進方策 |
前にも述べたように本研究の最大の特徴は、重力レンズ法を使用した広視野の星の大量測光にあり、自ら光を発しない暗い星を観測できる点にある。すなわちブラックホールから浮遊惑星や月程度の天体まで検出が可能であり、通常の天文学の手法では見えない暗い星も検出可能である。このような観測と解析をしているのは世界でMOAグループとOGLEグループのみであり、天文学分野に大きなインパクトを与えている。そこで今後の方針として、この特徴を最大限に利用して宇宙初期に大量に作られたとされるmini black hallの検出や地球型系外惑星の探査を実施したい。また1.8m望遠鏡を今まで観測していない別の星の方向に向け、新たな星(GRB)の情報を得たいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
NZでの観測経費や論文の出版経費、データの解析経費、および国際会議での成果発表経費として使用する。
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