研究概要 |
本研究に使用していた口径1.8m望遠鏡は、特別推進研究経費に基づき2002年4月から準備を始め、2004年12月1日NZ南島テカポ(標高1030m)に完成した。このMOA 1.8m望遠鏡のシステムは、重力マイクロレンズ効果の研究に特化して作られたもので、限界等級22.8等星まで感度があり、2.2平方度の広視野を一度に観測することが可能である。またCCD素子の量子効率80%である。重力マイクロレンズ効果専用望遠鏡としては世界で最も優れたシステムである。本システムを用いて観測した結果、以下に記述したような画期的な発見がなされた。特に(C)の発見が可能になったのは、on-lineによる惑星の光度曲線の解析が可能となり、いち早く異常のあるイベントをmailによって世界のfollow-up観測者に向け発信する体制が整ったためである。 (A)2007年2月から2010年11月までの観測で検出された2,135個の重力レンズ効果イベント中に142例の連星による重力レンズ効果イベントが含まれていた。この例を詳細に解析した結果、連星の平均質量比(q)が0.35±0.03であった。これは光学的手法で得られた観測結果と一致した。そしてq=0.03±0.01に褐色矮星砂漠が存在することが分かった。重力レンズ法を使って最初のbias freeの観測に成功した。 (B)望遠鏡を大マゼラン雲方向に向けて重力レンズ効果を利用して銀河ハロー中の暗天体の存在量を調べた。その結果暗天体の存在量は今まで言われてきた値より一桁少ないことがわかった。 (C)2014年3月までに、1.8m望遠鏡を使って観測を開始した時点では重力レンズ効果で見つかった系外惑星は1例だったが、2013年度末で53例に増大した。うち25例は論文として公表され、28例は現在発表準備中である。トランジット法や揺動法では発見が困難な、主星から遠く離れたsnow line領域に存在する系外惑星の形成に関する重要な観測データを得た。そして惑星形成論の発展に貢献した。
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