研究課題/領域番号 |
23540340
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 尚人 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 助教 (60377918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子源 / スピン物理 / 加速器 / レーザー / 高周波 |
研究概要 |
申請者が所持するスピン偏極電子源にピコ秒レーザーを照射した際に得られる電子ビームのパルス性能を見積もった。その結果数ピコ秒のパルス幅は現在の電子源で生成可能であろう事がわかった。またこのパルス性能を測定する手法として検討した結果、当初の検討どおり高周波を用いたRFデフレクタを採用することを決定した。次にこのRFデフレクタをピコ秒レーザーと共に使用する際に最適なRF周波数と入力パワーを見積もった。RF周波数は高ければ高いほど分解能が改善されるが、レーザーと同期をとる必要、実現できる高周波増幅器の性能に限界があるため、これらを考慮し周波数2612.9MHzと決定、入力パワーを60W以下と決めた。さらに上記のパラメータのもと電子ビームのパルス長を測定するのに最適となる高周波空洞形状を空間3次元に加え過渡的な応答をも計算できるAnsoft HFSS というコードで設計した。その結果、高周波空洞は直方体とし外部から高周波を導入することでその内部に励起できる高周波のうちTM010モードを用いる形状が得られた。また、上記設計と並列しレーザーと高周波のタイミング制御システムを設計・構築した。そのシステムとは発振器で生成した90.1MHzを二つに分け一方をレーザーシステムにもう一方を Phase Locked Lope を利用した29倍の周波数逓倍器に導くものである。この手法をとることで、90.1MHzのレーザーとこれと同期した2612.9MHzの高周波源を得ることができる。本年度にはこの周波数逓倍器とともにゲイン46dBの高周波増幅器を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要不可欠である高周波空洞の設計がほぼ終わり、今年度前半には製作に移ることが可能となった。今年度中盤には試験に移る予定である。またタイミング系についてもシステムの構築はほぼ終わっており、まもなく性能試験に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
高周波空洞の詳細設計を行い製作図面の作成、実機の製作を行う。実機の完成後は速やかに電子銃装置と組合せ規定の性能が得られていることを確認する。規定の性能とは真空度の要件、低出力の高周波を用いた高周波特性、高出力の高周波を入力した空洞特性である。これらの特性が確認されたのち実際に電子ビームをRFデフレクタに入射し、パルス長を測るのに十分な高周波が空洞内に実現できていることを確かめる。この電子ビーム試験は23年度に製作したタイミング調整システムの性能試験も兼ねることになる。また、RFデフレクタにより偏向された電子ビームの検出部分の製作を行う。この部分は試験の進捗に応じて感度が高いが精度の低いもの、感度は低いが精度の高いものの2種類を用意する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高周波空洞制作を行う。費用は材料と成る銅材の調達、粗加工、精密加工と幾つかの段階にわけて用いる。レーザー移送系の製作を行う。主な用途はミラー、光ファイバー等の光学部品とこれらを駆動するためのモータ類である。電子測定系の開発を行う。主な用途は真空チャンバーの制作費及び、その他真空部品である。
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