研究課題/領域番号 |
23540340
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 尚人 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 助教 (60377918)
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キーワード | 電子ビーム / 加速器 / スピン偏極電子源 / 透過光型電子源 / 高周波空洞 |
研究概要 |
高周波偏向空洞の詳細設計を行った。詳細設計は3次元電磁界シミュレーションソフトHFSSを用いた高周波入出力ポートの構造決定である。また、高エネルギー加速器研究機構と協力し工作図面の製作を行った。 工作図面に基づき高周波偏向空洞の製作を行った。製作は材料である無酸素銅の荒削りを分子科学研究所の装置開発室で行った。仕上げ加工は高エネルギー加速器研究機構においてネットワークアナライザを用い高周波特性を評価しつつ行った。仕上げ加工後、ロウ付けおよび溶接を行い高周波偏向空洞を製作した。 さらに製作した高周波偏向空洞の性能測定をネットワークアナライザを用いて行った。測定項目は共振周波数・QualityFactor・入出力ポートのカップリング定数・チューナー性能である。また、空洞内に励起される磁場分布をビーズ摂動法により測定した。この結果、何れの性能においても設計時の性能とほぼ同じであり、十分な性能を保持していることが確認できた。特にQualityFactorについては設計値に対し4%以内の精度で再現しており、設計・製作過程において大きな問題がなかったことを示している。 製作した高周波偏向空洞を実際の20kV高輝度電子源に接続し、真空試験および電子ビームを用いた試験を行った。真空試験では高周波偏向空洞内の真空度が十分に低く、電子源寿命に顕著な影響を与えないことが確認できた。電子ビームを用いた試験では高周波偏向空洞内にパワーを入力すること、当初の設計どおり20keVのエネルギーを持つ電子ビームを偏向できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、平成24年度に高周波偏向空洞の設計・製作を完了した。製作した高周波偏向空洞は実使用環境での動作も確認できている。このため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
製作した高周波偏向空洞を用いスピン偏極フォトカソードの応答性測定を行う。スピン偏極フォトカソードは電子線の発生に寄与する活性層の厚さを変えたものを3種類準備している。まずは、これを用いて電子線発生の応答性試験を行う予定である。また、応答性試験には数ピコ秒から数十ピコ秒まで操作可能なパルスレーザーを用いる予定である。 上記の3つのスピン偏極フォトカソードを用いた結果をもとに、より性能の高いフォトカソードの設計・製作を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
製作したシステムを用いてシステマィックな測定を行うため、これに必要な真空装置・レーザー装置関連の消耗品を購入する。 また、国際学会で成果発表を行うための旅費、成果論文の投稿費として用いる。
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