研究課題/領域番号 |
23540341
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷垣 実 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (90314294)
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キーワード | 原子核実験 / 磁気モーメント / 超微細場 |
研究概要 |
本研究で内部磁場測定及び磁気モーメント測定に使用する手法である摂動角相関法について、本研究の対象である希土類領域の原子核においてしばしばみられる対象準位を直接挟まないγ線カスケードによる摂動角相関の手法の研究を進め、その成果を2012年9月に北京で行われた超微細相互作用国際会議で発表した。さらにこの手法でつかう解析ソフトの開発と、解析ソフトによる解析環境を整備するために処理能力の高いPCを導入し、所属機関への設置を完了した。 また、対象原子核を生成する際に使用する東北大サイクロトロンラジオアイソトープセンターのRF-IGISOLでのビーム開発を進めた。東日本大震災の復旧作業に合わせてビームラインの再整備とSPIGの導入が行われたため、それらを活用し不安定核ビーム取り出しの試験調整を進めた。本研究の対象である希土類元素領域近傍の元素であるXeの安定同位体を使って純度の高い質量分離ビームを取り出すことに成功し、不安定核生成後目的外の原子核の混入を抑えることができるようになった。 京都大学原子炉実験所では、本研究の目的領域のCe-140を鉄中に注入しての摂動角実験を行い、Ce-140の磁気モーメントの再評価を行った。また、原子炉実験所での次の研究としてNd-147の磁気モーメントとPm-147の鉄中の内部磁場の測定の準備を進めた。収量的には圧気輸送管でのNd照射で問題ない事を確認しており、25年度の原子炉稼働とともに実験を開始できる状態となった。 その他、PCaPAC 2012に参加し、摂動角相関計測系のネットワーク分散のための高精度タイミング技術として期待されるWhite Rabbitに関する情報収集や関連計測制御技術の調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災で東北大サイクロトロンラジオアイソトープセンターのサイクロトロンやRF-IGISOL他主要施設が被災して使用不能となり、24年度半ばにようやく復旧した。このため、東北大サイクロトロンラジオアイソトープセンターで行う予定であった不安定核の生成と試料への注入、測定が遅れている。幸い24年度半ばの復旧後にRF-IGISOLでのビームの調整が行えたので、25年度は技術的には実験再開できる状態となっている。なお、実際の実験の可否はサイクロトロンおよびRF-IGISOLのマシンタイムの割当状況に依存するため、京大原子炉で実施可能なNd-147などは京大炉での実験準備を進めており、東北大の状況に関わらず研究は遂行できる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度で京大炉での準備はおおむね終わっているため、25年度の原子炉稼働で測定を開始する。最低でもこの原子炉実験所での測定結果により、当初の内部磁場に関する評価や磁気モーメント測定という目標は最低限達成できる見込みである。東北大での測定についてもマシンタイムの割当状況に応じ随時進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
京都大学での測定で追加で必要となった場合の機器や消耗品の購入を行う。また、摂動角相関による磁気モーメントや内部磁場の測定効率をさらに上げるため、測定に平行して計測系の分散化による改良を進める。このための機器購入や情報収集のための旅費を支出する。東北大での測定を進めるための旅費、および学会等での成果発表のための旅費を支出する。
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