研究課題/領域番号 |
23540344
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 康明 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 講師 (80314730)
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キーワード | 半減期 / 励起準位 / 核分光 / 中性子過剰核 |
研究概要 |
ウランの核分裂反応で生成させた質量数150近傍の中性子過剰希土類核の核構造を実験的に調べるために,京都大学原子炉付置のオンライン同位体分離装置KUR-ISOLを用いた核分光実験を行った.今年度は149Prおよび149Ndの励起準位の半減期測定に重点を置いた.詳細は以下の通りである. KUR-ISOLで生成分離した質量数149の核分裂生成物をテープ式捕集装置に打ち込み,測定器前まで周期的に移送した.測定位置にはLaBr3,プラスチックシンチレータおよびGe測定器を設置し,β-γ-γ同時計数測定を行った.このうち,LaBr3とプラスチックシンチレータ間の時間差に着目し,遅延同時計数の手法で励起準位の寿命解析を行った. 149Ndに関しては,時間差ヒストグラムの傾き(スロープ法)から,221keV準位の半減期を1.60ns, 258keV準位の半減期を0.22ns,271keV準位の半減期を0.42nsと決定した.前者二つの結果は過去の文献値と矛盾はないが,271keV準位については過去の値のおよそ1/10の値となった.過去の実験では質量分離等の手段を講じていないため,文献値は149Nd以外の核種の混合に伴う誤ったデータであると考えている.さらに,108keVおよび139keV準位に関しては,半減期が極めて短いことが分かったため,スロープ法ではなく重心法によるデータ解析を行った.その結果,それぞれの準位について,0.11nsおよび0.14nsの半減期を得た.従来は,半減期の上限値しか報告されておらず,確定的な値は本研究で初めて得られた. 149Prについては3つの準位について半減期を得た.このうち,87keVならびに127keVの半減期は,それぞれ4.2nsおよび1.0nsと分かった.これらの準位の半減期はこれまで全く報告されておらず,本研究で初めて実験的に決定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量数150近傍の中性子過剰核のうち,昨年度の結果を含めて4核種について半減期測定に成功している.この中には,実験的に初めて得られたデータも含まれており,原子核研究の基礎データとして貴重である.
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今後の研究の推進方策 |
KUR-ISOLを用いた崩壊核分光実験を継続して行う.2013年度は150Prに特に重点を置いた実験を行う予定である.この核種は実験データがほとんど報告されておらず,詳細な実験により新たな知見を得ることを目指す.まずはγ線測定を行い,崩壊図式を組み立てた上で,励起準位の半減期測定を行う計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
主として,KUR-ISOLを用いた崩壊核分光実験や学会発表を行うための旅費,および実験に必要な消耗品(遮へい材,信号ケーブル,データ記録メディアなど)の購入に使用する予定である.
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