研究概要 |
235Uの核分裂反応で生成させた質量数150近傍の中性子過剰希土類核の核構造を実験的に調べるために,京都大学研究用原子炉付置のオンライン同位体分離装置(KUR-ISOL)を用いた核分光実験を行った.最終年度である2013年度は,150Ceの崩壊図式の作成および娘核150Prの励起準位の半減期を測定することに重点をおいた研究を行った.準位半減期を決めることで,核行列を反映する換算遷移確率を実験的に決めることができる.得られた成果の詳細は以下の通りである. KUR-ISOLで生成分離した質量数150の核分裂生成物をテープ式捕集装置に打ち込み,測定器前まで周期的に移送した.測定位置には2台のGe測定器を置き,同時計数測定を行った.得られたデータは解析中であるが,実績報告書執筆時点で,15本の励起準位と約50本のγ線を含む崩壊図式を作成することができた.さらに,109keVのγ線の多重極度がE1であることが分かり,このことは109keV準位のスピン・パリティが(1+)であることを支持している.従来は5本の準位を含む簡単なものしか報告されておらず,しかもその一部に誤りがあることを明らかにし,詳細さを格段に向上させることができた.さらに解析を進め,近いうちに論文として発表する準備を進めている.原子炉の運転日程が変更になり,2013年8月以降の実験が急遽延期になった.このため,準位半減期測定実験は2014年4月実施にずれ込んだ.今後は,この崩壊図式に基づいた半減期解析を行う予定である. 3年間の研究期間を通し,上記に加え,148Ce, 148Pr, 149Prおよび149Ndの励起準位の半減期を決めることができた.このうち,148Prの98keV準位,149Prの87keVおよび127keV準位に関しては,本研究により初めて実験値が得られた.
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