研究課題/領域番号 |
23540346
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
神田 展行 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50251484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 重力波 / ラジオメトリ / 計算高速化 |
研究概要 |
日本でもレーザー干渉計型重力波検出器KAGRAの建設が進み、天体からの重力波の直接検出がもうじき実現すると期待されている。2台の検出器に到来する重力波は波源の方向によって時間差が生じるが、天球上に連続的に重力波を発する天体がある場合、重力波源と検出器の相対配置は地球の自転・公転によって変化するので、その時間差は時々刻々と変化する。この時間差変化を考慮した積分フィルターで連続的な重力波を探索し、天球上にマッピングが可能である。これが「重力波ラジオメトリ」であり、波形を仮定せずに連続的な波源を全天で探索できる優れた解析手法である。しかし、長いデータの積分を仮定する方向毎に繰り返したり、シミュレーションを行うには多数の不定波形重力波源を天球上に分布させて埋め込むといった、比較的冗長な計算が必要である。本研究では、この計算をGPGPU(画像処理演算装置による汎目的計算)を用いて高速化する事が目的である。本年度は、実際にGPUを備えたワークステーションを導入し、GPGPU環境でのプログラム開発をおこなった。まずGPGPUでの高速フーリエ計算(FFT)を行い、その基本的な動作や速度の確認をおこなった。続いて、並列化に着手したところである。現在のところ、GPUモジュールを1つのみ使用したとして、(1) CPUでの計算にくらべて2~3倍は高速化できそうであること、(2)ラジオメトリ計算の時系列データ区間単位を変更しても、総データ処理時間の増減を数10%程度に抑えることが見積もれた。実装上のの性能は引き続きの課題である。また、乙女座銀河団起源の重力波についての検出可能性[文献1]や、点重力波源の広がり方の研究[文献2]についての数値シミュレーションによる研究が進み、論文として発表した。またこれらを通じてラジオメトリ計算の技術上の問題点や改良も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H23年度の予定であったGPGPUの計算ルーチン開発は予定通り進んでいる。これに加えて、乙女座銀河団起源の背景重力波探査の可能性や、点源の広がりの数値シミュレーションなどで、国際的にも一歩進んだ研究内容になった。
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今後の研究の推進方策 |
GPGPUの計算開発については、並列化や最適化、そして実際の観測データのフォーマットにあわせたルーチンの開発が必要であり、引き続きこれを進める。これらについては、計算機技術の課題であるが、作業量さえ確保すれば比較的順調に進むと見込まれる。ラジオメトリ解析により明らかにできる重力波についての更なる研究は、サイエンス上の課題である。高速化したラジオメトリ計算で、数値シミュレーションを進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
GPGPUの個数(ボード数)による計算効率のスケーリングを検証するために、平成24年度は前年度に導入したワークステーションにGPUボードを追加する。また、初年度に予想以上に成果が上がっているので、国際会議で積極的に成果発表すべく旅費を割く予定である。
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