研究課題/領域番号 |
23540346
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
神田 展行 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50251484)
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キーワード | 重力波 / ラジオメトリ / 計算高速化 / GPGPU |
研究概要 |
2017~18年頃には重力波検出器の国際観測ネットワークが構成できる。複数台の検出器の相関解析により、背景重力波探索が可能になる。銀河団に内包される多数の重力波源の重ね合わせのような天体起源の背景重力波の場合、波形や位相が不確定であっても、到来方向に依存した到来時間差を利用して抽出できる。重力波源と検出器の相対配置が地球の自転・公転によって変化するのを補正し、長時間積分のフィルターで連続的な重力波を探索し、天球上にマッピングが可能である。これが「重力波ラジオメトリ」である。ラジオメトリはその性格上、長いデータの積分を、仮定する方向毎に繰り返す必要がある、またシミュレーションでは多数の不定波形重力波源を天球上に分布させて埋め込むといった、比較的冗長な計算が必要である。本研究では、この計算をGPGPU(画像処理演算装置による汎目的計算)を用いて高速化する事が目的である。 2012年度は、前年度に確認したGPGPU環境でのプログラム開発やFFT動作をもとに、ラジオメトリフィルタの実装をすすめた。一部(アンテナ応答補正の部分)を除いて、ラジオメトリをGPU上で動作させ、またGPU内でシミュレーションデータを生成して処理する計算工程の実装が進んだ。この結果、GPUによりFFT処理部分では数倍の高速化を確認した。一方で、GPUとCPU/メモリ間でのデータの受け渡しを工夫しなければ全体としての高速化のメリットが少なくなる。このため、より効率的なデータ分割のしかたや、GPUの1ユニットに行わさせる計算内容や処理フローの見直しを進めている。 また本年度は、複数のGPUユニットを同時に使用する場合のスケーリングメリットを評価するために、2ユニットのGPUを追加した。これらでもFFT等の動作を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPGPU環境へのラジオメトリ計算の実装は8割程度できている。また複数のGPUユニットを使用することも行った。 2年目の時点では、フィルタ自体の実装と、複数GPUを用いてのテストへの着手であったので、概ね予定通り進んでいるといえる。 計画申請時に予想していた、より高速化のために、CPUとGPUユニット間のデータの受け渡し(サイズ、頻度、内部処理とのタイミング)と内部計算フローの最適化が必要であるいう問題が生じている。そもそもこの問題をより具体的にし、実際の観測データ処理のために必要はことを明らかして解決することが研究の課題であった。この意味でも、GPUへのラジオメトリ実装が、具体的な問題点を検討できる段階まで進んだということができる。 また今年度は、国際会議を含む複数回の発表を行い、海外のラジオメトリ研究者との情報交換もおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、 (1) ラジオメトリの実装の完成 (2) 複数台GPUを用いた場合のスケーリングメリットの確認 (3) 多数の重力波源を組み込んだ数値シミュレーションデータの生成と、それをラジオメトリフィルタで解析する の3点をおこなう。とくに(3)について、サイエンスの成果になるよう、シミュレーションの内容を吟味、工夫しつつ進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションデータの保存や、多くのラジオメトリ計算結果の記録のためにデータストレージを購入する。 また、最終年度であるので、成果を発表するために国際会議、国内学会への参加旅費、論文投稿に使用を予定している。
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