研究概要 |
2017~18年頃には重力波検出器の国際観測ネットワークが構成され、複数台の検出器の相関解析により、背景重力波探索:銀河団に内包される多数の重力波源の重ね合わせのような天体起源の背景重力波や、宇宙論的な源による原始重力波の異方性などが期待できる。重力波源と検出器の相対配置が地球の自転・公転によって変化するのを補正し、長時間積分のフィルターで連続的な重力波を探索し、天球上にマッピングが可能である。これが「重力波ラジオメトリ」である。本研究では、この計算をGPGPU(画像処理演算装置による汎目的計算)を用いて高速化する事を目的とした。 研究期間全体を通じて、GPGPUを用いたことでシミュレーションを含むラジオメトリ計算工程全体をCPUを用いた場合に比較して100倍近く高速化に成功した。CPU, GPGPUは条件が違うので、一概に比較するのは難しさもあるが、今回の研究で導入したLinuxワークステーションの環境化での結果であり、対費用効果的には数十倍程度の高速化に成功したといってよい。 計画前半では導入したGPGPU環境でのプログラム開発やFFT動作をもとに、ラジオメトリフィルタの実装をすすめた。GPUとCPU/メモリ間でのデータの受け渡しを工夫した。より効率的なデータ分割のしかたや、GPUの1ユニットに行わさせる計算内容や処理フローの見直しを進めた。最終的に組上げた計算機環境を活かして、ラジオメトリ計算のGPGPUコアにおける並列化や、CPU側とのデータ受け渡し、全体の処理フローの最適化等を行い、上述の通り約2桁の計算速度改善を達成した。 また高速化を利用してラジオメトリの可能性を探り、複数周波数帯によって波源を弁別したり、数週間から数ヶ月で減衰するような重力波源に対しての応答などを見積もった。 これらの研究結果は複数回の国際会議、国内学会、および投稿論文で発表された。
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