研究課題/領域番号 |
23540348
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
柴田 祥一 中部大学, 工学部, 教授 (20267909)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽中性子 / 太陽フレア / 宇宙線 / 粒子加速 / 高感度宇宙放射線計測装置 / 宇宙天気 / 多方向ミューオン望遠鏡 / メキシコ |
研究概要 |
本研究の目的は,加速器実験で使用されたSciBarと呼ばれる粒子検出器を,高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂に移設し,高感度太陽中性子観測システム(SciCRT)を構築し,太陽フレアに於ける粒子加速機構解明のための基礎的な観測データ取得することである.また,その小型の装置(miniSciCR)を製作し「予備観測」を実施して,本観測システムの設計・構築を推進することである.同時に,SciCRTを多方向ミューオン望遠鏡として活用し,宇宙天気予報へ寄与することも視野に入れている. miniSciCRに関しては,当初の予定通り,メキシコ自治大学大学院学生の研究協力により,名古屋大学に於ける製作・動作試験を終え,現在,現地シェラネグラ山頂で「予備観測」を実施・継続している.そして,これまでに得られた予備観測のデータは,中部・名古屋・信州の各大学の研究協力者によって解析が進められている.特に,装置に入射してくる宇宙線粒子の飛跡に関しては,コンピュータシミュレーションとminiSciCRの観測結果との比較検討が進められ,本観測装置のトリガ条件についての基礎的かつ重要な判断材料を提供している. SciCRTに関しては,最後に装置が使用されたアメリカにて解体の後,メキシコに移送され,シェラネグラ山麓の研究所にて90度回転して組み立てられた.しかし,新たに準備した検出器の架台の強度が不足し,架台の補強と,その強度試験中である. データ収集用の回路系やコンピュータ,検出器用の光ファイバーなどの周辺機材は,日本での調達と調整を終え,現地へ移送済みである. 上記の他に,本装置を「多方向ミューオン望遠鏡」として使用することが,信州大学の研究協力者を中心に進められており,また,現在のVMEバスではなく,より高速なデータ伝送系による新たなデータ収集システムの検討も開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「予備観測」用のminiSciCRに関しては,計画通り順調に進んでいる.ただし,予期していたことではあったが,検出器が小さいので,そこから得られる情報には限界がある.現在は,そのような限られた条件の中で,コンピュータシミュレーションと対比させながら,装置の特性を調査している. 一方,本装置であるSciCRTに関しては,先に述べたように,シェラネグラ山麓の研究所にて90度回転して組み立てたのだが,架台の強度が不足したため,検出器に予想以上のたわみが生じてしまった.そのため,架台を補強し強度試験を行うという,余分な仕事が発生した. そこで,当初は,本装置であるSciCRTの組み立て後に,光ファイバーの取り付けや,データ取得回路・コンピュータの試運転を兼ねて,メキシコへ出張し,作業得る予定であったのだが,やむなくメキシコ出張を中止とした. これは,本研究費(旅費)の有効活用を図るためである.物品の購入等に関しては,特に問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
研究の達成度の項で,本装置であるSciCRTの,シェラネグラ山麓の研究所にての組み立てで,架台の強度不足が明らかになり,現在,架台の補強と,その強度試験中である,ということを述べた.現在,現地のメキシコで行っている強度試験では,新たに設計した架台では,検出器のたわみは,粒子の通過位置を算出するのに十分にまで小さくできる見込みである. したがって,早急に全架台を作り直し,再組み立てを行うことによって,幾らかでも研究計画の遅れを取り戻すことができると考えている. 本装置の再組み立てが完了した時点で,「予備観測」とともに,本装置の稼働に向け,周辺機器の取り付け・整備・試運転を実施するため,可能な限りの研究協力者を,現地メキシコへ出張させるつもりである.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記,今後の研究の推進方策に則って,次年度は,研究費の大半をメキシコへの海外旅費として使用する計画である. もちろん,場合に応じて,必要な機材の調達も行う. また,余裕があれば,現在検討を開始しているVMEバスより高速なデータ伝送系による新たなデータ収集システムの開発にも,本研究費からの補助を行いたいと考えている.
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