研究課題/領域番号 |
23540348
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
柴田 祥一 中部大学, 工学部, 教授 (20267909)
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キーワード | 太陽中性子 / 太陽フレア / 宇宙線 / 粒子加速 / 高感度宇宙放射線計測装置 / 宇宙天気 / 多方向ミューオン望遠鏡 / メキシコ |
研究概要 |
本研究の目的は,加速器実験で使用されたSciBarと呼ばれる粒子検出器を,高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂に移設し,高感度太陽中性子観測システム(SciCRT)を構築し,太陽フレアに於ける粒子加速機構解明のための基礎的な観測データを取得することである.そのために,まず,その小型の装置(miniSciCR)を製作し,予備観測を実施して,本観測システムの設計・構築を推進する.なお,本観測システムSciCRTは,多方向ミューオン望遠鏡としても活用し,宇宙天気予報へ寄与することも,本研究の視野に入っている. 平成23年度は,miniSciCRを現地シェラネグラ山頂へ設置し予備観測を実施した.予備観測のデータは中部・名古屋・信州の各大学の研究協力者によって解析し,コンピュータ・シミュレーションとの比較に基づき本装置の設計が進められた.また,アメリカのフェルミ加速器研究所にあったSciBar検出器を,メキシコのINAOE研究所(高度2150m)へ搬送し,総重量15トンの加速器ビーム用の装置を宇宙線観測用にするために回転して支える架台を新たに製作,装置を組み立て直した. 平成24年8月には,日本から3名の研究者がメキシコへ出張し,検出器の4分の1に対し,光センサと電子回路,データ収集パソコン,電源を取り付け,麓での予備観測を実施し,宇宙線の信号を取得することに成功した.さらに,平成24年11月と平成25年2月にそれぞれ2名ずつの研究者がメキシコへ出張し,検出器全体で宇宙線の信号を捉えることに成功した. その後,検出器を安全に山頂へ移設する方法が検討され,平成25年度早々には,麓から高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂への移設を開始する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備観測用のminiSciCRに関しては,計画通り順調に進んでいる.ただし,予期されたことではあったが,検出器が小さいので,そこから得られる情報には限界があり,本装置の設計やトリガ条件の設定に関しては,コンピュータシミュレーションを活用して,装置のスケールの差を補完しながら実施している. 一方,本装置に関しては,平成23年度に,INAOE研究所で組み立て直した際に,最初に設計した架台が強度不足で,再設計し,もう一度解体して組み立て直すという予期せぬ工程が入ってしまい,貴重な時間を費やしてしまった.しかし,平成24年度には,先にも述べたように,麓にての装置の稼働に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
麓のINAOE研究所での本装置の稼働に成功したので,本年度は,本装置を高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂へ移設する予定である. 稼働後は,データを取得し,解析して,連続運転に向けての運用条件の検討を行い,可能な限り早期に連続運転を開始したい. また,今後は,本装置のデータ解析手順の整備・充実をはかるとともに,これまでに判明した装置の改良すべき点に対する開発を行っていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の報告書でも述べたように,平成23年度に本装置をINAOE研究所で組み立て直した際に,最初に設計した架台が強度不足で,再設計の後,再度解体して組み立て直すという予期せぬ工程が入り,計画の進行が遅れてしまった.これによって出張期間がずれ込み,繰越金が生じたが,平成24年度には,先にも述べたように,麓にての装置の稼働に成功した.次年度は,引き続き,繰越金を含めた研究費の大半をメキシコへの海外出張費として使用し,本装置を高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂への移設と,連続観測の早期開始を図る. 研究の最終年度なので,研究費の全額を旅費として使用し,装置の安定な稼働を最優先させる計画であるが,研究費に余裕が生じれば,現在検討中の,データ転送システムの高速化の開発にも使用したいと考えている.
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