研究課題
本研究の目的は,加速器実験で使用されたSciBarという粒子検出器を,高度4600mのメキシコ・シェラネグラ山頂に移設し,高感度太陽中性子観測システム(SciCRT)を構築,太陽フレアに於ける粒子加速機構解明のための基礎的観測データを取得することである.そのため,まず,小型の装置(miniSciCRT)を製作,予備観測を実施し,本観測システムの設計を推進する.また,本装置は多方向ミューオン望遠鏡として活用,宇宙天気予報への寄与も視野に入れて研究を進める.平成23年度はminiSciCRTをシェラネグラ山頂に設置,予備観測を実施し,観測データとコンピュータ・シミュレーションとの比較から,本装置の設計を行った.また,アメリカ・フェルミ加速器研究所のSciCRTをメキシコ・INAOE研究所(高度2150m)へ搬送,解体・回転・再組立を実施,宇宙線観測用に改造した.平成24年8月には検出器の1/4をセットアップし,山麓のINAOEにて予備観測を実施,宇宙線の信号を捉えることができた.また,平成24年11月から平成25年2月にかけて装置を増強し,SciCRT検出器全体での予備観測に成功した.その後,総重量15トンの検出器を山頂へ移設する方法の検討に入った.平成25年4月から山頂の観測小屋の建設を開始,本装置を解体・山頂へ移送し,観測小屋内への設置を行った.平成25年5月から装置のセットアップの後,測定のための試験・調整に入り,平成25年9月に連続観測を開始した.取得データの量は,中性子とミューオン合わせて,1ヶ月に2TB程度と大量のため,メキシコ自治大学の研究協力者が毎月山頂へ登っている.しかし,本装置はインターネットに接続されているので,その活用に向けて,データ量と転送速度という問題点に関し,今後検討を重ね,改善していかねばならない.
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