研究課題/領域番号 |
23540349
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
山県 民穂 甲南大学, 理工学部, 教授 (50068144)
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キーワード | αクラスター / 核媒質効果 |
研究概要 |
軽い原子核のαクラスターの巨大双極子共鳴を調べ、自由な4He核の巨大双極子共鳴と励起エネルギー、等の物理量について比較できれば、原子核の内部から原子核の性質を知ることができる可能性がある。このためにLi核の光反応断面積を測定する実験の準備を行ってきた。 2013年1月から、兵庫県立大学の放射光施設NewSUBARUで6Liを標的とする光核反応実験を始めた。レーザー光と高速電子とのコンプトン散乱によるγ線を発生し、金属Li標的に照射し、光核反応で放出される中性子を41本の3Heガス比例計数管で検出した。これまでに、励起エネルギー5MeVから55MeVまでの測定を終え、結果を解析中である。中性子検出器の検出効率は実験とシュミレーションで決定した。2n、3nチャンネルからの寄与は同時計数法で評価したが、高々20%以下の寄与と推定できた。 その結果、まだ断定はできないが、励起エネルギー12MeVに6Liの巨大双極子共鳴を観測した。この結果は他の先行研究結果と矛盾しない。この共鳴以外に励起エネルギー約33MeVに新たな共鳴状態が観測された。この新たな共鳴は我々がこれまでに行ってきた軽イオン核反応で観測、予測したαクラスターの励起エネルギーに近いが、予想より約6MeV大きい。このことは、原子核の内部ではαクラスターの質量が核媒質の影響により大きくなっていることを示唆している。今後、この事実を確定するため、光核反応について、詳細な解析と追加実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
追加実験が必要かもしれないが、実験はおおむね終了した。解析も順調で今のところ、大きな困難は予想されない。予備的な実験結果は研究開始前に予想したように見える。
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今後の研究の推進方策 |
2013年8月までに実験結果の精密な解析を行い、結果をまとめて論文として出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度までは実験のための準備を行ってきた。2013年度に実験を実施するに当たり、実験資材、試料をさらに購入する必要がある。さらに、実験実施のためには多くの人の援助を受ける予定で、その謝礼が必要である。これらを賄うため、2012年度分の一部を2013年度に繰り越した。 2013年度には実験を実施・完了し、結果を論文として発行し、学会発表するための費用が必要である。
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