研究実績の概要 |
高速系革新炉における核特性に必要なマイナーアクチノイド(MA)の中性子核反応データを取得する新しい手法として、重イオン多核子移行反応を用いた代理反応研究が注目されている。これは、Heなどの原子核を入射核とする反応により中性子入射過程と同じ複合核を生成し、これら複合核の核分裂崩壊やγ崩壊を測定することで核分裂や捕獲断面積を決定する手法であり、標的が利用できない短寿命原子核の中性子核データを取得する方法としての特徴を有する。実験では、反応後に放出される荷電粒子を検出することで、複合核を同定している。例えば、^<18>O+^<238>U→^<16>O+^<240>U^*において、^<16>Oの測定により複合核^<240>U^*を生成すると仮定されている。しかし、真に^<240>U^*が生成されているかを実際に確認することは重要な課題として残っている。本研究では、^<16>O粒子を検出するとともに、反跳によって標的から飛び出してきた蒸発残留核^<240>Uを原子力機構(東海)タンデム加速器施設に設置された反跳生成核分離装置(RMS)で分離分析し、質量数240の原子核が生成されることを持って、上記の過程の検証を行うことを目的とする。従来の他の研究と異なり、より重い入射核としての^<18>Oビームを選ぶことも特徴である。これにより、系に持ち込まれる運動量が大きいため^<240>Uの反跳エネルギーが大きく、RMSを通過して検出に至る効率が高いことが期待される。これにより、実験に伴う不確定性が少なくなる。実験に先立ち、反応で生成される酸素同位体(^<18, 17, 16>O)を分離分析する必要があるが、このためのシリコン△E-E検出器を開発した。△E検出器の厚さは75μm、E検出器の厚さを300μmとし、高い立体角が得られるよう円環型の構造とした。テスト実験の結果、酸素同位体をきれいに分離することに成功した。RMSについては、質量分解能を調べるためのテスト実験を行った。反応として^<58>Ni+^<58>Niを選び、融合蒸発反応で生成される質量数108, 109, 110の原子核を生成し、焦点検出器(Siストリップ検出器)上におけるこれら原子核の空間分布を調べた。この結果、RMSの質量分析能力が十分あり、200を超える質量数の分離も可能である見通しをえた。このように現在、技術開発をクリアし、RMSを用いて^<18>O+^<238>U反応による^<240>Uの分析を開始している。
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