研究課題/領域番号 |
23540354
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中村 誠一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器科学支援センター, シニアフェロー (70391729)
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研究分担者 |
幅 淳二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (60180923)
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キーワード | REGEM / PEDOT/PSS / メラミン樹脂 / 表面改質 / 密着性 / 微細加工 / ウェットエッチング / 硫酸 |
研究概要 |
REGEMは導電性フィルムを微細加工する必要がある.大面積で低コストのGEMを作るとするならば,ウェットエッチング技法が常法である.通常のプリント回路製作に用いられるドライフィルムのフォトレジストを用いた試作では,導電性高分子膜との密着性が不足し,界面にエッチング液が浸み込んだと思われる現象があった.そのために,細孔が二段階にエッチされ孔径がかなり拡がったREGEMができた.その結果,REGEMのガス利得が比較的に小さくなった.その改善策は,導電性高分子膜とエッチングマスクの密着性にかかっていることが判った.そこで,樹脂製のエッチングマスクを止め,銅箔マスクを試すことにした. この導電性フィルムは,難密着性であるが,通常用いられる二液法や銅スパッタ法による無電解めっきを試した.結果はウェットエッチングに耐え得る密着性は得られなかった.しかし,エッチングの性能は,孔径の拡がりもなく,端部の剥がれもなく,意図した物を得た.ただ,エッチング作業に耐え得る密着性が不足していた. 銅マスクの密着性は改善できる.同様なことは文献[特開2011-225929]にあるが,導電性フィルムにポリアリルアミン等を化学修飾させ,窒素リッチな表面に改質し,銅イオンを表面に化学吸着させれば,無電解めっきの密着性が強固になる筈である.銅マスクがウェットエッチングに耐え得るエッチングマスクであることを確かめた上で,REGEMの製作に取り掛かることにした. ウェットエッチングに関して,もう一つの問題が判った.導電性高分子膜のエッチングレートは基材のポリイミド樹脂のそれより小さいことである.この対策として,導電性高分子膜が濃度70wt.%の濃硫酸に侵されること[色材,71(1998)619]が判り,先ず,この硫酸処理で導電性高分子膜を処理してから,基材のポリイミド樹脂をエッチングすればよいことはわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
この研究で達成したいことに次の三点を挙げた.①導電性かつ感光性コーティング剤の開発をすること,②高抵抗性電極を持つ,大面積かつ安価なREGEMフィルムの可能性を示すこと,③ REGEM が長期的な安定性と信頼性を一層高めること.24年度までに,②までを目標にしてきた.高抵抗性の導電性フィルムは得たが,ウェットエッチングよる製法で課題が2つ明らかになった.一つは,銅張ポリイミドフィルムに通常使われる方法が導電性高分子コーティングフィルムには密着性の不足という問題が出た.もう一つは,ポリイミド樹脂とメラミン樹脂のエッチングレートに相応の違いがあり,同一のエッチング液では精度の良いGEM細孔を作ることは難しい,という問題が分かった. これらの問題を解決すれば,銅張ポリイミドフィルムと同等のREGEMが製作できると確信している.第一の問題に対しては,銅マスクをエッチングマスクとする方法を開発している.第二の問題に対しては,導電性高分子膜を硫酸処理で除外する方法を開発した.さらに,上述の方法とは異なる,リフトオフ法によるREGEMの製法を考案し設計している.これらの解決法を見出すのに多くの時間を割いた.
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今後の研究の推進方策 |
DEPOT/PSSとメラミン樹脂によるコーティングフィルムがGEMの製作材料となるためには,微細加工性に課題があることが判った.先ず,これを解決しなければならない.第一は,樹脂製のエッチングマスクに替え,銅箔のエッチングマスクを使用可能とすること.第二は,さらに,GEM穴に残る導電性高分子コーティング膜の除去を容易にすること.これによって,精度の良いREGEMが作れると考えている. 別の手法も進める.リフトオフ法(簡潔に言えば,REGEM電極を金型で作る方法)によって,REGEMを作る. 精度の良いREGEMを作り上げた上で,大放電テストや放射線損傷小テストを行いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
精度の良いREGEMを製作することを第一とする.続く大放電テストや放射線損傷テストも,これなくしては意味がない.故に,次年度の研究費はおおむね製作費に使わざるを得ない.平成24年度にはウェットエッチング法にてREGEMを完成するつもりでいたが,通常使われるフィルム型のフォトレジストが開発中の導電性高分子膜には不適切であることが判った.代替措置として,銅めっきによるエッチングマスクがウェットエッチングに使える可能性を見つけた.次年度の研究費は,フォトレジストに使う分を合わせ,銅めっきマスク法の完成させ,精度の良いREGEMの完成に使い,REGEMの性能を確かめる.
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