研究課題/領域番号 |
23540358
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
長野 邦浩 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (90391705)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ATLAS / LHC / トリガー / ミューオン / 新粒子探索 |
研究概要 |
ATLAS実験トリガー系のうち、第2段においてミューオン検出器だけを用いるトリガーアルゴリズム(ソフトウェアプログラム)を新規に開発した。現行のソフトウェア構造では拡張が容易ではないため、一から書き直す事を選択した。ソースコードはC++言語で合計約7000行になった。また、運動量測定の際に用いる変換関数のパラメトリゼーションを改良し、運動量分解能の大きな向上を得た。さらに、検出器の読み出しに問題があった場合でもパターン認識の条件を緩めるなどしてミューオン再構成できるよう改良も加え、効率を上げた。この新トリガーアルゴリズムを2012年運転に向けてATLAS 実験オンライン環境へ導入した。2012年5 月現在、メインのトリガーと平行して試験運用中であり、詳細な性能評価を行っている。崩壊二次粒子やカロリメータ内での反応による粒子などといったバックグラウンドを排除するために最内層のミューオン検出器におけるヒット情報が有効であることが分かったので、最内層におけるパターン認識の改良に着手した。中間層と最外層情報から先に運動量を求めて、磁場を考慮して外挿することでより正確なパターン認識を行えるよう、改良中である。また、ミューオン検出器で測定された時間情報をもとに検出粒子の速度を測るアルゴリズムの開発に向けて、時間情報からトラック再構成を行う現行アルゴリズムの性能評価を行った。特に最内層において left-right 不定性を解くアルゴリズムにまだ改善の余地がある事が分かり、現在、改良を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現行ソフトウェアでは目指す拡張が技術的にも難しく、書き直して全て一から開発する必要があったが、開発した新しいトリガーアルゴリズムもオンラインへ導入に成功することが出来た。バックグラウンドを排除するための最内層のミューオン検出器におけるヒット情報の改良、ミューオン検出器で測定された時間情報をもとにしたトラック再構成の改良も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発した、第2段におけるミューオン検出器だけを用いるトリガーアルゴリズムの詳細な性能評価を行う。安定して高効率で稼働できる事を確かめたのち、現行アルゴリズムと置き換えてメインのトリガーとしてデータ取得を行う。最内層におけるパターン認識の改良(中間層と最外層情報から先に運動量を求めて、磁場を考慮して外挿することでより正確なパターン認識を行う)を完成させる。ミューオン検出器で測定された時間情報を用いてのトラック再構成の際のleft-right 不定性を解くアルゴリズムを改良する。その後、時間情報をもとに検出粒子の速度を測るアルゴリズムの開発を本格的に始める。2012年運転では高統計が期待されているので、上記の改良、開発にはこれらの2012 年データを用いる
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次年度の研究費の使用計画 |
新たに開発したトリガーアルゴリズムをオンラインで実際に運用し、コミッショニング、性能評価などを行うので、現地に滞在することが必要となる。このため、研究費の大半は渡航費として充てる予定である。
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