研究課題/領域番号 |
23540360
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日野 健一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90228742)
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キーワード | コヒーレントフォノン / 非平衡グリーン関数法 / ファノ-アンダーソン模型 / 超短パルスレーザー / 超高速過程 / 高密度励起 |
研究概要 |
バルク半導体(GaAsおよびSi)にサブフェント秒領域の高強度超短パルスレーザーを照射した際生成されるコヒーレント振動ダイナミックスを理論的に解析するため、前年度まで半導体ブロッホ方程式に基づいた定式化を行い、試行的な数値計算を実行した。しかるに、数値計算にあたって、実行可能なレベルでのアルゴリスム構築に困難があることと、コヒーレントフォノン生成までの非平衡ダイナミックスにおいて非マルコフ過程に関する物理的理解が不明確になることが明らかになったため、別な視点からの理論の再構築を行った。 具体的には、次の二つの理論的方法である。一つ目は、過渡的なファノ状態及びコヒーレントフォノン状態生成までのコヒーレント過程に関して、非マルコフ過程を正当に評価できるようにするため、非平衡グリーン関数法を駆使した理論を構築した。二つ目は、過渡的なファノ状態生成を、強結合電子・フォノン相互作用によるポーラロニックな準粒子として理解する実験的な描像に即した理論を構築するため、ファノ・アンダーソン模型に基づくボゾン化法に即した理論を構成した。非平衡グリーン関数法に基づく理論には、高励起電子密度に対する理論的制約はないが、ファノ状態生成に関しては数値計算により明らかにする必要があり、定性的な理解には幾分見通しが悪いがある。一方、ボゾン化法は、低励起電子密度極限で正当化される理論であるため、現実的な定量的扱いには限界があるが、ファノ状態をポーラロニックな新規(新奇)なボゾン準粒子として定性的に理解するには適切と考えている。現在、これら二つの相補的な方法を並行して解析し、数値計算に乗せる準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた半導体ブロッホ方程式に基づく大規模数値計算による解析には、現実的な計算レベルでの遂行可能性から判断して困難があるようなので、前述のような他の方法論(非平衡グリーン関数法およびボゾン化法)による理論の再構築を行った。それゆえ、数値計算実行に関しては、研究進捗が多少遅れていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
非平衡グリーン関数法に関しては、D1の大学院生とともに、理論の構築並びに物理的過程をどのレベルまで取り込むか検討し、さらにはこれをアルゴリスムに乗せる作業を行う。この際、当研究室で習熟しているDVR法を適用し、数値計算の効率化を図る。 一方、ボゾン化法に関しては、M1の大学院生とともに、まず解析的なレベルでの理解ができるように、構築して一般性があるモデルをさらに簡単化し、さらに数値計算を行い、定性的な理解を目指す。そのうえで、プラズモン-フォノン相互作用を取り込むなどモデルにおける近似精度を高め、さらなる解析を行う。 以上の二通りの方法による数値計算結果を比較し、さらに既存の実験との比較を行い、物理的理解の進化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度繰越金(約39万円)と今年度交付直接経費(50万円)を合わせた研究費は、大方は研究代表者1名と大学院生3名(予定)の複数回の国内外会議等への旅費として使用する予定である。とりわけ、今年度は年度末のアメリカ物理学会での成果発表を大きな目標にしている。そのための海外渡航費が最も大きな支出になると思われる。
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