研究課題/領域番号 |
23540365
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久米 徹二 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30293541)
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研究分担者 |
佐々木 重雄 岐阜大学, 工学部, 教授 (30196159)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 金属水素化物 / 高圧極限 / 分光測定 / 金属化転移 / 構造相転移 |
研究概要 |
軽元素水素化物を高密度にすると、水素1s 軌道の重なりにより、1s金属状態を形成する可能性がある。1s金属は高密度水素で予測されており、常温で超伝導を示すなど特異な物性が期待されている。アルミニウム水素化物であるAlH3は、圧力下において金属化することが知られており、1s金属状態になっていることが示唆されている。本研究では、1s 金属の実現とその物性を明らかにするため、アルミニウム水素化物であるAlH3 を100 万気圧以上の高圧力極限状態まで加圧し、「結晶構造変化」、「絶縁体―金属相転移」に関する新しい知見を得ること目的とする。 本課題を遂行するにあたり、H23年度は、「超高圧可視紫外分光光度計の構築」と「測定用試料準備」を行った。超高圧可視紫外分光光度計を構築するため、UV-vis 分光光度計を購入し、アタッチメントにより既存の超高圧分光システムに組み込んだ。これにより、超高圧ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)内の試料の透過率測定、反射率測定を可能にした。測定用試料は以下のようにして準備された。合成された試料(AlH3:東北大学金研、折茂研究室提供)をDACにより板状に押しつぶし、圧力校正用のルビーと共にDACの試料室に入れた。質の高い測定データを得るため圧力媒体として比較的静水圧性の高いアルゴンを使用した。アルゴンのDACへの充填は、物質材料研究機構の協力のもとガス充填装置により行った。なお、使用するダイヤモンドアンビルは、分光特性の優れた人工合成ダイヤモンドを使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度に予定した研究実施内容は(1)吸収測定装置の導入と(2)超高圧力測定のための試料準備であった。装置導入については、当初の計画通りの物品を購入し、装置の立ち上げを行うことができた。また、(2)の試料準備については、すでに超高圧ダイヤモンドセルへのAlH3の封入を完了している。 以上から当初の計画通りに順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
・ラマン散乱測定および赤外吸収測定 150 GPaまでのラマン散乱測定および赤外吸収測定を行い、AlH3の振動モード(特にHに関わる)を明らかにすることにより、加圧による構造の変化(構造相転移)を明らかにする。これまでに行われている、X線構造解析の結果を参考にし、高圧力下での水素の振る舞いを明らかにする。・超高圧力下における光吸収測定および反射率測定紫外可視透過率測定を100 GPa程度まで行い、吸収スペクトルの立ち上がりを観測することにより、AlH3バンドギャップエネルギーの変遷を測定する。100 GPa以上で金属化し、透過率が著しく減少した場合、反射率測定を赤外・可視領域で行い、自由電子によるプラズマ反射の観測を行い、自由電子密度を見積もる。これらの実験により、AlH3 の金属化に至るまでのバンドギャップの減少を圧力の関数(原子間距離の関数)として明らかにするとともに、金属化したAlH3 の電荷密度から、自由電子の由来を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に計上されている費用の大部分は、測定に必要不可欠なダイヤモンドアンビルの購入にあてる。また、旅費に計上される費用に関しては、最新の研究成果発表のために充てられる。
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