100 GPaを超える高圧力下におけるAlH3の光吸収スペクトルを,ダイヤモンド・アンビル・セル (DAC) を用いることにより,明らかにすることに成功した。実験には,顕微紫外可視吸収分光装置,フーリエ変換赤外分光光度計を用い,ダイヤモンド・アンビルのラマンスペクトルから圧力を決定する事により吸収スペクトルの圧力依存性を明らかにした。 圧力65 GPaでの試料の黒色化が見られた後,130 GPaまで加圧操作を行ったが,目視による試料の色に大きな変化は見られなかった。しかしながら,106 GPa以上の圧力用域で,赤外線領域における吸収スペクトルの裾が観測された。このスペクトルは,自由電子によるプラズマ吸収を仮定した計算と定性的に一致し,加圧による金属化を分光的にはじめて明らかにした結果であると言える。また,130 GPaまで加圧した後,63 GPaまで減圧したところ,試料は半透明な元の状態へと戻った.このことから,高圧での金属状態において,AlとHの分離は起きておらず,AlH3の本質的な変化であることが確認された。
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