研究概要 |
1.新たな単結晶育成法の確立準備:ブリッジマン法による単結晶育成を試みるために、既存の縦型電気炉に坩堝昇降装置を組み込み、酸化物試料で予備実験をおこなった。2.基礎物性の精査(1)比熱測定:α-R2S3(R=Pr,Nd)の比熱を測定し、次の知見を得た。Pr系:0.36Kより低温に新たな転移が存在、TN=2.95Kの転移でのエントロピー変化が単純予想の半分程度、TN以上でSchottky異常。Nd系:TN2=0.67Kの新たな転移、Nd1,Nd2ともに基底は二重項。(2)磁場中比熱測定:α-R2S3(R=Sm,Gd,Tb,Dy)の磁場中比熱を測定し、次の知見を得た。Sm系:磁場依存性が他に比べて小さいが、TN1のピークはb軸に垂直な磁場(H⊥b)、TN2のピークはb軸に平行な磁場(H//b)でより大きく抑制される。Gd系:磁場によるTNピークの低温シフトは、H//bの場合に顕著。Tb系:磁場印加によってTN1,TN2のピークが低温シフトするが、H//bによるTN1のシフト、H⊥bによるTN2のシフトは顕著であり、4T(H⊥b)でTN2の転移は消失するように見える。Dy系:TN1,TN2のピークは、H//bによって低温シフトするのに対して、H⊥bに対しては高温シフトし、磁気熱量効果が確認された。以上の結果から、各α-R2S3のR1サイトが、高温側転移点:TN1(Gd系は転移点が一つ:TN)でb軸にほぼ平行な方向に反強磁性転移を起こす点は共通していると考察された。各R1,R2の基底はGd系:スピン八重項、Sm,Dy系:クラマース二重項、Tb系:二重項であると考えられるが、Sm2,Tb2に関しては半数しか秩序化に寄与していないように見える。(3)輸送特性:単結晶試料の大型化が未完であり、焼成条件の変更により固くすることに成功した焼結体試料を用いてホール係数測定に着手した段階である。
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