本研究では金-磁性ヘテロ構造ナノ粒子表面の金原子に配位する有機分子配位子によって引き起こされるナノ粒子の磁気特性変化について系統的に調べて制御法を確立する他,高周波磁場による金-磁性ヘテロ構造ナノ粒子の加熱実験を行い,磁気ハイパーサーミア用発熱担体としてのナノ粒子の応用展開をはかることの2点を目的としている。最終年度ではナノ粒子表面のスピンディスオーダーによって磁化が減少し,理論値を下回っていたFe3O4球状ナノ粒子の比吸収率(SAR)を改善するために,合成法を変えて表面にファセットをもつ多面体状Fe3O4ナノ粒子を合成した。この試料を用いて交流磁場による発熱実験を行った結果,発熱能力の指標となるSARの実験値は球状ナノ粒子に比べて高く,前述の磁気モーメントの減少の原因を大幅に抑えていることが示唆された。また,別に合成した多面体状の金ナノ粒子を接合し,金-磁性ヘテロ界面をもつAu-Fe3O4多面体状ナノ粒子の合成を行った。ナノ粒子そのものを変えずにナノ粒子表面を修飾するオレイルアミンを,チオール基を含む低分子配位子であるDimercapt succinic acid(DMSA)に配位子置換した試料を用いて交流磁場による発熱実験を行った結果,オレイン酸で修飾した粒子の実験値に比べDMSAで修飾した粒子のSARが2倍程度増大した。これらの結果は,粒子表面の修飾分子がナノ粒子の磁気特性に影響を及ぼしていることを示唆しており,金-磁性粒子界面のラフネスが重要であることが明らかとなった。
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