研究課題/領域番号 |
23540387
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 優 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50302823)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 準安定励起原子 / スピン偏極 / 電子分光 / 表面磁性 |
研究概要 |
本研究の目的は,所属研究室で開発した世界的に最高輝度を持ったHe*(1s2s,トリプレット)準安定原子源にスピン偏極機能を付加し,電子分光測定に応用することにある.第一にスピン選別用の6極磁場レンズを設計製作することでスピン偏極し (例えば↑↑;M(S) = +1),かつ超高輝度な He*トリプレット原子源を開発する.そしてこの原子源を利用して,高エネルギー分解能な「スピン偏極準安定原子電子分光」として機能させる.第二に,無機,有機にとらわれず,幅広い表面系にこの電子分光法を適用し,特にフェルミ準位近傍の価電子におけるスピン状態を調べる.表面系における磁性を探る一手段としてこの測定手法を確立し,新しい物性を見出すことが本研究の最終目標になる. 電子分光装置と準安定原子源の整備を行い,孤立原子・分子に対してスピン偏極されていない準安定原子電子スペクトル測定を行った.He*トリプレット原子の速度分布・強度の測定も平行して行い,6磁極からなるスピンポーラライザー,3つの電磁石からなるスピンフリッパーの設計やシミュレーションを行った. 固体電子分光装置を用いて金属基板上にアルカリ金属(Cs)を吸着させた表面,アルカリ金属-有機分子混合系薄膜のスピン偏極されていない準安定原子電子スペクトル測定を行った.フェルミ準位近傍における価電子状態のエネルギー分布や状態密度について知見を得ることが出来た.これは,スピン偏極した準安定原子電子スペクトルの比較対象となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,現有の真空装置を用いて行う.昨年発生した地震により装置の一部が破損し,修理の必要が生じた.加えて節電要請により,復旧作業に長時間を要した.以上の理由により23年度に設計・製作を行う予定であったスピンポーラライザー,スピンフリッパー,Stern-Gerlach装置の一部が年度をまたぐことになった.
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今後の研究の推進方策 |
繰り越し研究費を用いて平成24年6月までにスピンポーラライザー,スピンフリッパーを設計・製作する.そして,スピンポーラライザー,スピンフリッパー,Stern-Gerlach装置の動作確認を行い,必要に応じて再構築を行う.平行して,固体電子分光装置で特異な表面磁性を発現していると期待できる表面系に対して準安定原子電子スペクトル測定を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は,個々の部品を自ら設計・組み立てするため設備備品はない.消耗品はスピンポーラライザー,スピンフリッパーの制作費,真空部品,電子部品,液体窒素,金属単結晶基板となる.旅費は研究成果の発表に用いる.研究成果費用は論文投稿料,別刷り費用である.
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