研究課題
本研究は、スピンの並び方は一次元的であるがスピン間相互作用のネットワークがある特定の構造を組むために生じるスピンフラストレーション効果のために、通常の一次元磁性体とは異なる磁性を示す化合物を探索・合成してそれらの磁気的性質を明らかにすることを目的とする。昨年度、結晶構造から鑑みて、Cu3(A)CO32H2O(A=アジピン酸)が新しいダイヤモンド鎖とみなせることを示したが、1/3磁化プラトーはみられなかった。今年度強磁場磁化測定をより低温で測定したところ、磁化プラトー存在の徴候をみることできた。更に、磁化率の温度依存性を測定し、得られた結果と厳密対角化計算による磁化率計算結果とを比較検討することにより、スピン間交換相互作用を、半定量的に評価することができた。比熱測定も行い、代表的な交換相互作用が数10K程度と大きいにもかかわらず、三次元秩序は2Kまで生じず、Cu3(A)CO32H2Oの一次元性が非序によいことを示唆する結果を得る事が出来た。また厳密対角化計算を自ら行い、磁化率の温度変化曲線を理論的に計算した。計算結果と実験結果とを比較することで交換相互作用を半定量的に決定することができた。その結果、交換相互作用の一部は強磁性的であることが示唆された。これらの結果から交換相互作用が強磁性的なパラメータ領域においても磁化プラトーは生き残る可能性があるという新しい結果が得られた。ダイヤモンド鎖とは別に、三本鎖磁性体に関する実験研究もおこなった。昨年度までの研究で、セニックサイトが三本鎖磁性体とみなせること、磁化率から低温まで磁気秩序が生じないこと等がわかっている。今年度は微視的な観点から知見を得るために、1H-NMR測定を行った。
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JPS Conf. Proc.
巻: 1 ページ: 012019(4 pages)
10.7566/JPSCP.1.012019
粉体および粉末冶金
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