①スピネル化合物CuIrRhS4の輸送特性 スピネル化合物はその特徴的な結晶構造により,磁気的フラストレーションを持つことからスピングラスを示す物質も多い.硫化スピネルCuIr2S4は温度降下によりTMI = 226 Kで金属絶縁体転移を起こす.一方,CuRh2S4はTc=4.7Kの超伝導体である.Irサイトの半分をRhで置き換えたCuIrRhS4の電気抵抗率,ゼーベック係数,熱伝導率の温度依存性を調べた.電気抵抗率測定からはこの物質の電気抵抗は全温度域で金属的であることが分かった.また,その温度依存性はA-15超伝導体の常伝導状態を再現する経験式でよく再現できることが分かった.ゼーベック係数は,低温領域では負であり,50K以上で正に転じる.その温度依存性はフォノンドラッグ,3d電子の拡散,バリアブルレンジホッピングの寄与を考慮することで,広い温度範囲(5<T<300 K)で再現できた.また3d電子の拡散は正の寄与をフォノンドラッグとバリアブルレンジホッピングは負の寄与を与えることが分かった.熱伝導の温度依存性は昨年度調べたスピングラス系物質CuTiZrS4とよく似ており,高温側では局在フォノンのホッピング伝導の寄与が大きくなることが分かった.これらの結果から求めた無次元性能指数は300 Kで6×10-3程度であった. ②ホイスラー化合物Ni2MnGaの輸送特性 Ni2MnGaは200K付近でマルテンサイト転移をおこし高温立方晶から,低温正方晶へと構造変化する.この物質の電気抵抗率,ゼーベック係数,熱伝導率の温度依存性を調べた.熱伝導ではマルテンサイト転移温度でディップ状の異常が現れることが分かった.ゼーベック係数は全温度域で負であることがわかった.無次元性能指数は200K付近でピークを示し,0.02程度であった. これらの結果をまとめ,2014年度熱電学会で発表した.
|