研究課題/領域番号 |
23540396
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長谷 正司 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (40281654)
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キーワード | 量子スピン系 / 次元性 / スピンクラスター / 磁気秩序 / 中性子非弾性散乱 / 中性子回折 / 高磁場磁化 / 圧力効果 |
研究概要 |
研究目的は、固体物理学の重要な分野の1つの量子スピン系において、有限個のスピンからなるスピンクラスターが結合した0次元スピン系(スピンクラスター系)の磁気秩序の発現機構の解明に取り組むことである。量子スピン系の多様な興味深い磁性の最大の要因は次元性である。現在までに3から1次元スピン系の磁気秩序の研究は進んでいるので、本研究の後では、全ての次元のスピン系の磁気秩序の描像が明確になることが期待される。本研究の対象物質はCrVMoO7(スピン数2、スピン3/2)、Cu2CdB2O6(スピン数4、スピン1/2)、SrMn3P4O14(スピン数3、スピン5/2)である。 平成24年度は以下の研究を行った。①SrMn3P4O14の磁場中での中性子回折測定を行った。2.2K以下のゼロ磁場で現れるスパイラル磁気構造は磁場に弱く0.25T以上の磁場では消えた。替わって0.1T以上では1/3磁化プラトーを反映する磁気反射が現れた。現在、磁気構造の解析を行っている。②圧力効果(元素置換)を行うために、CrVMoO7とCu2CdB2O6の元素置換をした試料を作製し、磁化測定を行った。調べた範囲では圧力誘起非磁性状態は現れなかった。置換量の増加に伴い、低温でのキュリーワイス項は増加する。置換によってクラスターが破壊されることを示唆している。置換をしたCrVMoO7では6 K付近に別の磁気転移が現れる。これが本質かどうかを調査中である。③圧力セルを用いて0.3GPaまでの圧力をCu2CdB2O6に加えて、磁化測定を行った。磁気転移温度はほとんど変化しなかった。調べた範囲では圧力誘起非磁性状態は現れなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高磁場磁化測定は終了した。Cu2CdB2O6の中性子非弾性散乱測定は平成25年4月に行った(平成25年度の成果)。SrMn3P4O14とCrVMoO7についてはまだである。SrMn3P4O14の中性子回折測定は終了したが、CrVMoO7についてはまだである。圧力効果(元素置換)と圧力効果(静水圧)は進行中で、平成25年度には完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、中性子非弾性散乱測定、中性子回折測定、圧力効果(元素置換)、圧力効果(静水圧)、実験結果の考察を行う。なお、中性子散乱測定については、平成23と24年度に東日本大地震の影響のため実施できなかった課題についても行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な支出予定は、研究業務員雇用費305千円(4から7月)である。当初の予定では平成24年度までに試料作製を完了する予定であった。しかしながら、予定通りには進まなかったので、引き続き4ヶ月間、研究業務員を雇用し、試料作製等を行ってもらう。
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