研究課題
申請課題の研究目的は大別すると3つに分類され、1.共鳴X線散乱により、複雑な秩序をもつ系の基底・励起状態の性質の理論的な解明、2.共鳴X線散乱の非弾性過程の解析を通じた磁気励起の理論構築、3.予備プラン、であった。順に実績をまとめる。計画1.最終年度は軌道・磁気自由度の競合する系の典型例として、Sr2IrO4の基底状態と軌道・磁気励起の構造を、共鳴X線散乱のスペクトル解析と合わせ解析した。磁気励起モードが2本に分裂すること、軌道・磁気励起の部分のエキシトン様のモードの存在などをいずれも予言の形で提案した。期間全体では、秩序の競合する系で、定量性な議論が可能な興味深い系を模索していたが、自由度の競合系ではあるが、活況の分野での適用の機会に恵まれ、今後の実験との整合性が議論できる段階に至った。計画2.研究期間を通じ、銅酸化物超伝導体の共鳴非弾性X線散乱による磁気励起構造の解明を目的として、長距離秩序の有無、次元性の違いなどを処理できる局在系における強結合理論を進めてきたが、最終年度では、ドープ系への応用を視野に、多バンドの系に対して弱結合の遍歴電子描像に基づいた理論の構築に初めて成功し、モデル計算でその有用性を示すに至った。同物質群では、キャリアのドープ量によらないパラマグノン的な磁気励起の存在が謎とされており、本成果はドープ系への適用も可能で、長距離秩序が立たない場合への応用も踏まえた形になっており、この方面の理論の進展の足がかりを与えるものである。計画3.最終年度はメインの計画が大きく進展したため、発動の必要がなかった。期間全体では弾性散乱に対する多極子系に対するスペクトル解析の理論は、すでに確立したといってよく、前年度、実験グループとの共同により定量的なスペクトル解析の例として結実した。また、構造因子計算に供するデータベースに相当する論文も出版できた。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
Physical Review B
巻: 89 ページ: 064410 (1)-(9)
10.1103/PhysRevB.89.064410
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 053709 (1)-(5)
10.7566/JPSJ.83.053709
巻: Vol. 88, No. 10 ページ: 104406(1) -(5)
10.1103/PhysRevB.88.104406
巻: 88 ページ: 014407 (1)-(10)
10.1103/PhysRevB.88.014407