研究課題/領域番号 |
23540406
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 聡 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10263063)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 電子相関 / 超伝導 / 磁性 |
研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。(1) トポロジカル絶縁体における電子相関効果の研究を行なった。トポロジカル相の電子相関に対する安定性、自明なモット絶縁体への相転移の性質を明らかにした。また、ギャップレス端状態が電子相関効果によってどのような影響を受けるのかも明らかにした。以前の他のグループによる研究では、バルクがトポロジカル絶縁体であっても、端状態に電子相関による不安定性が生じる可能性が示唆されていたが、今回の我々の研究によって、バルクのモット絶縁体への相転移と端状態の相転移は同時に起こり、端状態のみの不安定性は生じないことが明らかになった。(2)トポロジカル絶縁体接合系における格子欠陥のトポロジカルな性質を明らかにした。トポロジカル絶縁体では端状態だけでなく、格子欠陥中にもギャップレス状態が現れ、物性を支配する重要な要因となる。トポロジカル絶縁体では波数空間にトポロジカルに非自明な構造が現れるが、欠陥が存在すると、それに加えて実空間でのトポロジカルな構造も考慮する必要がある。量子系において波数空間と実空間を同時に扱う標準的なアプローチは半古典近似を適用することであるが、トポロジカル絶縁体ではしばしば、この半古典近似が破綻する場合がある。我々はこのようなケースでも扱うことができるフルに量子的な手法を考案し、具体例として線欠陥中のギャップレス状態に起因する量子ホール効果の問題に適用できることを示した。(3)空間反転対称性のない希土類化合物RENiC2における電荷密度波相においてスピンネマティック相とトポロジカル秩序が共存する可能性について調べた。このような系では反対称スピン軌道相互作用を介して電荷密度とスピンネマティック秩序が混在することが予想され、これをモデル計算によって確認し、新奇秩序状態が、この物質で実現している可能性が高いことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、計画されていたテーマは(1)トポロジカル絶縁体に対する電子相関効果の研究、(2) トポロジカル絶縁体における欠陥に起因する電磁気現象、であるが、研究実績でも述べたように (1)(2)ともにほぼ計画とおりに順調に進んでいる。(1)の内、端状態に対する電子相関効果については、当初の予想と違って、特定のモデルについては新奇な相は出現しないことが明らかになったが、他方、系の対称性を拡張することによって端状態の不安定性が生じる可能性を示唆する結果も得られつつあり、この方向で研究を進めることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究成果をふまえて、トポロジカル絶縁体に対する電子相関効果の研究をさらに発展させる。特にトポロジカル絶縁体の対称性による分類が電子相関効果によっていかに変更されるかについて、系統的な研究を行っていく。これによって電子相関効果による新しいトポロジカル相の実現の可能性を探索していく。さらに当初の予定どうり、トポロジカル超伝導体におけるマヨラナ・フェルミオンの観測手法に関する研究も進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度から取り組むテーマの推進のため数値計算ライブラリを購入する。また、研究打ち合わせと研究成果発表のための海外および国内出張の旅費として使用する。
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