研究課題/領域番号 |
23540406
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 聡 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10263063)
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 超伝導 / マヨラナ・フェルミオン |
研究概要 |
当該年度は以下の研究を行った。(1) トポロジカル絶縁体・超伝導体では、そのトポロジカルな性質は系に固有のトポロジカル不変量で特徴づけられる。多くの場合、このトポロジカル不変量は、輸送現象や電磁気応答等を通して、実験で観測できる物理量として現れることが知られている。ところが、ある種のトポロジカル絶縁体・超伝導体では、そのトポロジカル不変量がいかなる物理量として実験で観測可能なのかが、これまで分かっていなかった。我々はこの問題に対する答えを与えることに成功した。具体的には、ある種の接合系を考えると、ホール効果等の電磁気応答や熱応答にその系を特徴づけるトポロジカル不変量が現れることが明らかになった。また、我々は接合系ではなく、バルクな系に対しても、このトポロジカル不変量が現れる物理量を探索し、ある種の電気磁気効果で誘起されるカイラル分極に、そのトポロジカルな特徴が現れることを明らかにした。 (2) トポロジカル絶縁体と超伝導体との接合系に現れるマヨラナ・フェルミオンの存在条件と安定性について研究を行った。その結果、ある種の接合系では乱れ等に対してトポロジカルに安定ではないマヨラナ・フェルミオンが現れることが可能であることを示した。これはマヨラナ・フェルミオンを用いたトポロジカル量子計算への応用上、重要な結果である。 (3) トポロジカル絶縁体に対する電子相関効果の研究を行った。その結果、強相関電子系である重い電子系や、磁性体においてトポロジカル秩序が可能であることが理論的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的の一つであるトポロジカル相に対する電子相関効果の研究については、24年度においていくつかの成果を達成することができた。特に重要な成果として、弱相関ではトポロジカル秩序が存在しない系において、強相関効果によってトポロジカル秩序が実現可能になる系を発見したことが挙げられる。また、3次元トポロジカル超伝導体等のカイラル対称性を有する系におけるトポロジカル秩序がいかにして実験で観測できるかという問題は、難問であるが故に当初の計画では達成目標としていなかったが、この問題を解決する糸口と成る成果をあげることができたのは計画以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
最近、トポロジカル超伝導体におけるマヨラナ・フェルミオンの実験観測に関する報告が海外のグループを中心に増えてきている。しかしながら、それらが本当にマヨラナ・フェルミオンの存在を示しているのかどうかについては様々な議論があり、決着していない。それゆえ、本課題の重要テーマの一つである、マヨラナ・フェルミオンの検出方法の研究について早急に進めていく必要がある。今後はこのテーマに重点を置いて研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果の発表のため、国際会議参加等の海外出張旅費を計上し、また、同時に研究をさらに進める上で海外の研究者との共同研究が重要になってくると考えられるので、この点での旅費、外国人研究者の招聘費等も計上していく。
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