研究課題/領域番号 |
23540407
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米澤 進吾 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30523584)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非従来型超伝導 / 圧力誘起超伝導 / 微小試料熱容量測定 / 圧力中比熱測定 / 有機物超伝導体 / スピン3重項超伝導体 / Sr2RuO4 / 熱磁効果 |
研究概要 |
本年度は、以下のような進展があった。(1) これまでの(TMTSF)2ClO4に関する成果を、論文としてPhysical Review B誌(Rapid Communication)に発表し、国際学会で招待講演を行った。(2) 圧力セルを導入し、圧力印加のテストを行った。特に、温度計を圧力セルに入れて圧力印加し、その特性を確認した。(3) 圧力中比熱の測定に先立って、まずは常圧中で微小な試料の比熱を決めるための新しい比熱測定セルを開発した。このセルは、圧力セルで用いる予定の微小厚膜抵抗チップを温度計として用いているなど、圧力セル中での比熱測定も踏まえた設計をしている。また、これまで申請者らが用いてきた交流法に加えて、より熱容量の精度の高い緩和法を用いた測定も行えるのが特徴である。さらにこのセルの新しい点は、熱磁効果も併せて測定できるという点である。熱磁効果とは「外部磁場を変化させた際に試料の温度が変化する現象」のことであるが、この温度変化から試料のエントロピーの磁場微分を決めることができる。セルの作製に加え、比熱や熱磁効果の測定をほぼ全自動で行うためのプログラムも開発した。本年度はこれらの新しく開発した装置を用いて、スピン3重項超伝導体Sr2RuO4の熱磁効果測定および比熱測定を行ったので、その結果の詳細を述べる。驚くべきことに、磁場を結晶のab面に平行に印加した場合に、この物質の超伝導転移が低温高磁場で1次相転移になっていることを明らかにした。我々の結果はスピン3重項超伝導体において超伝導転移が1次相転移になっている例を初めて示したことになり、超伝導と磁場の相互作用にこれまでに知られなかった寄与が存在していることを強く示唆している。このことは、今後の超伝導研究に重要な影響を与えると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧力中の実験がまだあまり着手できていないが、常圧中での比熱測定に関しては装置やプログラムも含めて強力な技術が確立できた。さらに、Sr2RuO4に関してはインパクトのある論文として出版が可能なデータをそろえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
圧力中の実験を進めるとともに、当初の対象物質である(TMTSF)2ClO4の常圧における比熱の詳細も非常に重要な意味を持っている可能性が出てきたため、常圧における研究も併せて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在稼働中の比熱・熱磁効果測定装置とは別にもうひと組の測定装置を立ち上げているため、そのための電子機器類を購入する。また、国際会議の出席や論文発表の費用としても用いる。
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