研究課題/領域番号 |
23540409
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡村 英一 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00273756)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 赤外分光 / 電子状態 / 高圧 / SPring-8 / 強相関電子系 |
研究概要 |
本研究では、近年強相関電子物質で外部圧力や化学組成などを変化させた際に、低温で磁気秩序が消失する「磁気量子臨界点(QCP)」付近で観測される特異物性に着目する。すなわち申請者らがSPring-8の高輝度な赤外放射光を用いて独自に推進してきた「高圧下の赤外分光による物質電子構造の測定手法」を、QCPを示すモデル物質に用いることにより、圧力によってその物性をクリーンに制御しつつ、QCPでの異常物性の起源となるフェルミ準位付近の電子構造を明らかにすることを目的とした。初年度(H23)ではQCPを示す代表的な物質と考えられるCeRhIn5および関連物質であるCeCoIn5について、常圧から8 GPaまでの圧力、室温から5.5 Kまでの温度範囲、そして20 meVから1.1 eVの光子エネルギー範囲で、その反射率スペクトルの測定を行った。また強相関f電子系物質であるCeRu4Sb12, PrRu4P12, PrFe4P12に関しても高圧赤外分光実験を行った。その結果いずれの物質でも圧力増加と共に顕著なスペクトルの変化を見いだした。特にCeRhIn5およびCeCoIn5では、新奇物性の鍵を握るf電子と伝導電子の混成状態を反映する「赤外吸収ピーク」の顕著な成長とシフトを観測できた。このピークはCeRhIn5においてQCPに対応する2 GPa付近から急速な変化を見せるが、常圧で既に超伝導を示す参照物質CeCoIn5では単調な変化しか見られない。これらの興味深い実験結果とQCPとの関連性について、2年目のH24年度では、より定量的なモデルに基づいてスペクトルの解析を進める予定である。CeRu4Sb12, PrFe4P12に関しても特に10 GPa以上の圧力で顕著なスペクトル変化を観察しており、実験をさらに推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主なターゲットであるCeRhIn5およびCeCoIn5に関して、順調にデータが出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に取得したCeRhIn5, CeCoIn5のデータを解析し、光学伝導度を導出する。また実験はCeRu4Sb12, PrFe4P12に関する実験を継続する。また高圧下で大きな物性変化を示すf電子物質であるYbNi3Ga9の研究を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在はSPring-8のパワーユーザー課題に採択されているため、ビームタイムを十分確保する事ができている。このため遠赤外、中赤外の測定をどちらもSPring-8で赤外放射光を用いて行っている。しかし中赤外の測定は放射光を使わず従来型の熱光源でも行う事が可能と考えられ、これによりSPring-8のビームタイムを遠赤外の測定に集中させることができる。以上の事情により、次年度に神戸大学の実験室に中赤外領域の高圧・低温実験を行うための装置を立ち上げる。具体的には現有しているフーリエ干渉分光計と赤外顕微鏡を中心として、高圧発生セルであるダイヤモンドアンビルセル(DAC)専用のクライオスタットを設計・製作する。このクライオスタット一式のために150万円を確保する。また国際会議LEES 2010(米国)出席・発表のための登録費および旅費として約40万円、残りを国内旅費、消耗品に当てる。
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