研究概要 |
強相関電子系物質で外部圧力を加えた際に、低温で磁気秩序が消失する「磁気量子臨界点(QCP)」付近での電子状態を、申請者らがSPring-8の高輝度な赤外放射光を用いて独自に推進してきた高圧赤外分光手法を用いて探ることを目的とした。当初計画通り、測定対象はSrFe2As2(Sr122)およびCeRhIn5(Ce115)とした。Sr122は常圧での反強磁性転移温度(ネール温度)が約200 Kであり、約4 GPa以上の圧力で、最高34 Kの超伝導転移温度を示す。一方Ce115では常圧でのネール温度は4 Kであり、約2 GPa以上の圧力で2.2 Kの超伝導を示す。本計画の2年目までに、既に両物質の高圧下での反射スペクトルR(ω)は測定を終えており、特にSr122はデータ解析も行って光学伝導度σ(ω)の導出も終わった。それによれば、常圧では反強磁性転移に伴いスピン密度波(SDW)に起因するエネルギーギャップが明確に観測されたが、加圧と共にこのギャップは抑制され、超伝導を示す6 GPaの圧力ではほぼ消失した。一方、残念ながら超伝導ギャップを観測することはできなかった。理由は明確でないが、恐らく高圧セルのためにスペクトル領域が限られたためと考えられる。以上の結果はH. Okamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 074720で出版した。一方Ce115については、8 GPaまでの実験を2年目までに終え、最終年度であるH26年度にデータ処理を進め、σ(ω)を導出した。その結果2 GPa以上の高圧では中赤外領域に顕著なmid-IR peakが現れた。混成が強い価数揺動Ce物質の多くについて、常圧で同様のピークが報告されていることから、圧力によってf電子の混成が変化した結果と考えられる。現在論文準備中である。
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