研究課題
VO2薄膜における軟X線照射誘起 絶縁体―金属転移について、その現象の詳細を明らかにし、発言モデルを提案した。これまでに、TiO2基板上に作製したVO2薄膜に軟X線を照射すると、その絶縁体相が金属化することを見出している。H25年度は、光誘起相転移の機構を理解するために、放射光を用いた光電子分光実験を行った。その結果まず、室温でVO2絶縁体相に放射光照射すると、照射時間とともにフェルミ準位上の状態が増加すること、変化は不可逆であることを確認した。これらは前回の実験結果を再現している。新しい事実は、価電子帯スペクトルの解析の結果である。光照射によりV3dの状態密度は増加するが、O2pのそれは減少することがわかった。光照射によって、V3d電子数が増加する一方で、酸素量は減少していることを示唆する。あわせて、光照射による金属相V3dのスペクトル形状が温度誘起の金属相のものに似ていることも見いだした。軟X線照射により、高温金属相が出現している可能性がある。これらの結果をもとに、軟X線照射による絶縁体―金属転移について、「酸素脱離による金属化」のモデルを提案した。軟X線照射により薄膜から酸素が脱離する、残された電子がV3d に注入されるとともに金属化が生じる、というモデルである。モデルの検証が今後の課題である。一方で、遷移金属酸化物の物質開発でも成果を得た。対象物質は、ルチル型TaO2である。この物質は準安定相のために単一相化が困難であった。本研究では、薄膜化により、はじめて単一相化に成功した。酸素分圧の調整と合わせて、TaO2と同じ構造を持つNbO2バッファー層を活用したことが成功の要因である。TaO2の作製では、Taイオンの価数だけでなく、構造の安定化も重要であることを示した。電気抵抗測定から、得られた膜は絶縁体的であることがわかった。測定結果に基づき、膜中にTa-Ta2量体が生成されている可能性を提案した。
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