研究概要 |
本研究の目的は強相関電子系ホウ化物を高圧下の環境にさらしたときに期待される新規秩序もしくは新奇な状態を見いだすことにある。特に注目したのが近藤半導体YbB12と、TmB4の通常の結晶周期上に現れた準周期磁気相の高圧下応答である。 (1)YbB12は価数揺動半導体でありかつトポロジカル近藤絶縁体と目されるSmB6と同様の電子状態を持つと期待される近藤半導体である。大阪大学基礎工学研究科附属極限科学センター清水研との共同研究により,ダイアモンドを用いた加圧法(DAC)により最終年度は195GPaまで加圧下の電気抵抗測定に成功した。エネルギーギャップは165GPaで消滅し、半導体から金属への転移前後の量子臨界状態近傍(195GPa)で超伝導が出現した。臨界温度は0.8K、臨界磁場は約700mTであり、近藤半導体に初めて圧力により超伝導を誘起した例となった。またYbB12に4価のZrイオンを置換する合金では、近藤温度とエネルギーギャップが増大する現象が観測された。置換イオンの価数で,YbB12のギャップと近藤温度のチューニングが可能である事を明らかにした。一方伝導のギャップは置換により次第に減少するという相反する結果が得られ,電荷とスピンの自由度の分離が現れた。 (2)TmB4は24年度までは3GPaまでの高圧下磁化測定により、高圧によって転移点が上昇し、準周期相も保持していることを確認している。25年度は超伝導磁石とDACを組み合わせての高圧下電気抵抗測定を東大物性研上床研,埼玉大道村氏と共同研究を進めているが、加圧時に試料が破損するトラブルにより26年度にも引き続き行なう。 (3)SmB6やTmB6に,Y, La等を置換すると温度変化を伴う価数揺動を示す事がわかったが、単結晶育成時に組成が大きく変わる。組成変化と価数,ギャップの変化の対応の詳細は今後の課題である。
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