研究課題/領域番号 |
23540414
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
楠瀬 博明 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00292201)
|
研究分担者 |
松本 正茂 静岡大学, 理学部, 教授 (20281058)
古賀 幹人 静岡大学, 教育学部, 准教授 (40324321)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 奇周波数超伝導 / 自由エネルギー汎関数 / 偶奇周波数混合 |
研究概要 |
径路積分法を用いて自由エネルギー汎関数の一般的な構築を行った.エネルギーの極小解を正しく考慮すると長年問題となっていた奇周波数超伝導の熱力学的不安定性と負のマイスナー核の問題が解決することを見いだした.正しい自由エネルギーの表式が得られたことで,ギャップ方程式、正常・異常グリーン関数、エリアシュベルグ方程式などが統一的に導かれ、奇周波数超伝導に対する内部矛盾のない理論形式が得られた.自由エネルギーの実数性と最小の条件を正しく取り扱うことで,奇周波数超伝導の理論提案以来の理論的な欠陥が解消した.もっとも簡単な模型として局所的な格子振動(アインシュタインフォノン)を媒介とするモデルによる奇周波数超伝導の可能性を,上記の理論形式を適用した自己エネルギーを無視したギャップ方程式を解いて詳細に検討した.また,磁気量子臨界点近傍の特異な臨界スピン揺らぎを媒介とする引力モデルについても同様の計算を行い,局所引力との違い,特にリン力の周波数依存性の違いと奇周波数超伝導の出現条件について検討した.奇周波数超伝導は従来のBCS超伝導とは正反対の強結合かつ強い遅延効果があれば出現し得ることを見出した.特に,臨界スピン揺らぎは低エネルギーで発散する特異な揺らぎであり奇周波数ペアの形成に重要であることが明らかになった.空間反転対称性のない系におけるパリティ混合超伝導との類似性に着目し,外磁場に代表される時間反転対称性を破る外場による偶奇周波数混合超伝導状態を提案した.磁場・温度相図,ギャップ関数の偶周波数成分・奇周波数成分の周波数依存性の特徴,ギャップ関数とその共役関数の関係とギャップ方程式の可解性と関係を明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自由エネルギー汎関数に基づく奇周波数超伝導の定式化は問題なく達成された.得られた定式化に基づき臨界性の違いに着目した局所電子格子系と臨界スピン揺らぎによる奇周波数超伝導の出現条件を検討し,その出現に不可欠な要素を得る点も十分に達成された.研究計画を超えた発展として,外磁場の印可による偶奇周波数混合超伝導状態の発見があった.そこで量子モンテカルロ法による動的平均場計算プログラムの開発を先送りして,新しい偶奇周波数混合超伝導状態の詳細な検討を優先的に行った.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の重要課題として局所電子格子相互作用と臨界スピン揺らぎという二つの引力モデルの相違点,自己エネルギー効果をまず明らかにする必要がある.また,外磁場の印可による偶奇周波数混合超伝導状態に対する様々な熱力学量を得るためにも混合状態に対する自由エネルギー汎関数の導出が必要である.上記2点を踏まえ自己エネルギーを含めた一般的な自由エネルギー汎関数の定式化を行うとともに,それを具体的な模型に適用して混合状態を含めた奇周波数超伝導の熱力学的特性と自己エネルギー効果を明らかにしていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
松山と静岡に研究メンバー3名が集まり,定式化の詳細と議論を行う.また韓国で開かれる強相関と磁性に関する国際会議で発表と情報収集を行う.その他,フランスの実験研究グループを訪問し,討論を行う.これらを遂行するために次年度研究費は主に旅費に使用する.
|