研究課題/領域番号 |
23540417
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
松平 和之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40312342)
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研究分担者 |
岩佐 和晃 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00275009)
桑原 慶太郎 茨城大学, 理工学研究科, 准教授 (90315747)
長谷川 巧 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (20508171)
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キーワード | パイロクロア酸化物 / イリジウム酸化物 / 金属絶縁体転移 / 中性子散乱 / ラマン散乱 / X線回折 |
研究概要 |
パイロクロア型イリジウム酸化物における温度誘起の金属絶縁体転移における磁気状態および結晶構造の変化を明らかにし、その機構解明を目的としている.代表者の松平は単結晶育成,Nd2Ir2O7の精密熱膨張測定を行った。その結果,金属絶縁体相転移に伴い格子が大きくなることが明らかになった。これはSm2Ir2O7とは異なる振る舞いである。また,パルス強磁場を用いた測定から,Ln2Ir2O7の磁気抵抗効果について調べた。その結果,絶縁相ではLn3+が磁性イオンである場合に巨大な負の磁気抵抗効果を示し,非磁性の場合には小さな正の磁気抵抗効果を示す事を明らかにした。これは絶縁相でのd-f相互作用の重要性を示唆している。これらの成果は2013年2月に論文として公表した。 松平は2012年6月にハミルトン(カナダ)で開催された国際会議HFM2012にて「Metal-Insulator transition in pyrochlore oxide Nd2Ir2O7」の講演題目で招待講演を行った。 分担者の岩佐(東北大)はTb2Ir2O7の中性子散乱測定を行い,解析を進めている。分担者の長谷川(広島大)は単結晶Sm2Ir2O7のラマン散乱の測定を進めている。分担者の桑原(茨城大)は単結晶Sm2Ir2O7のX線回折測定を行い、格子定数の温度依存性に金属絶縁体相転移による異常を見いだした。 2012年9月の日本物理学会にて,代表者と分担者が集まり研究の状況について確認し合った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
純良単結晶の育成が難しく,やや遅れている。また,液体ヘリウムの不足で物性評価の実験が出来ない問題が新たに発生している。また,大震災の影響もまだ続いており,中性子散乱実験のマシンタイムが大幅に減少している。しかし,代わりに強磁場効果において新たな知見も得られ,おおよそ達成していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
◆ 試料合成:Nd2Ir2O7,Sm2Ir2O7,Tb2Ir2O7の純良単結晶の育成を行う.(松平) ◆ 磁気状態の解明:Tb2Ir2O7の中性子散乱実験を行い、Tb3+の結晶場および磁気構造を明らかにする.(岩佐) ◆ 結晶構造の解明:単結晶Nd2Ir2O7とSm2Ir2O7のラマン散乱測定およびX線構造解析を行う.(長谷川、桑原) Sm2Ir2O7およびTb2Ir2O7の精密熱膨張測定を行う(松平) ◆ H25年度7月にパイロクロアワークショップを北海道大学にて開催し,成果を発表するとともに日本の関連研究者との議論を行う。その世話役を行っており,30名程の参加者が予定されている。H25年度8月に東京大学にて開催される強相関電子系国際会議(SCES2013)に参加し,成果発表を行う。秋に九州工業大学にて分担者を集めた全体ミーティングを行う。研究成果は日本物理学会においても発表を行う.また、研究成果が得られ次第論文発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:試料作成のための物品(試薬,石英管,白金),電気抵抗,熱電能,熱膨張測定のための寒剤(液体ヘリウム),光学レンズ,中性子およびX線測定用試料容器 旅費:国内学会および国際会議への成果発表旅費。全体ミーティングを開催するための参加旅費
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