研究課題/領域番号 |
23540419
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
阿曽 尚文 琉球大学, 理学部, 准教授 (40313118)
|
キーワード | 重い電子 / 超伝導 / 価数揺らぎ / 量子臨界点 / 低温物性 / 圧力下磁化 / 中性子 |
研究概要 |
理論により価数揺らぎが量子臨界点近傍で起こることが指摘されており、高圧下における重い電子系超伝導体の量子相転移と価数ゆらぎ効果を極低温下の物性測定及び中性子散乱により明らかにしていくことが本研究の目的であり,本年度はCeIrIn5の極低温圧力下電気抵抗測定と圧力下磁化測定による研究を進めた. I.圧力下微少電気抵抗測定方法の開発 昨年度,価数揺らぎにより輸送現象における温度依存性のべきや残留抵抗値に何らかの異常がでるのではないかと考え,極低温度領域におけるいくつかの圧力下(8GPaまで)において,電気抵抗の温度依存性を測定した.但し,交流法による電気抵抗測定では見かけ上負の電気抵抗が出てしまう場合があった.そこで,本年度はこれを解決するために「超低雑音差動増幅器」や「電圧平衡型V-Iコンバーター」等を購入又は製作し,交流抵抗時の測定感度を大幅に向上させることができた. II.微小磁化測定用圧力セルの開発とCeIrIn5の磁化測定 昨年度,MPMS磁化測定装置によりCe系等の微小磁気モーメントの圧力下磁化測定が可能になるような圧力容器を試作し,比較的よい性能が得られた.本年度はCeIrIn5における圧力下磁化測定の研究を進め,有効磁気モーメントの圧力依存性の議論が可能になるような結果を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1番の目的である琉球大学における極低温物性測定環境(希釈冷凍機)の構築が昨年に引き続きやや遅れいていると考えているが,昨年度は大分進捗があった.昨年度購入した「ピコボルトメーター」に加えて,本年度取得した「超低雑音差動増幅器」や「電圧平衡型V-Iコンバーター」と組み合わせて,交流法による微少電気抵抗装置を琉球大学の方でも完成できた.現在希釈冷凍機との組み合わせ作業を行っている最中である. また,圧力下磁化測定装置は順調に開発が進んでいると考えており,最終年度の進展が期待される. なお,「中性子回折によるCeRhIn5における反強磁性相と超伝導の相関」の研究については,東海村の研究用原子炉の再起動の目途がたたないため,実施が難しい可能性がある.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の点について研究を重点的に進める. I.CeIrIn5の希釈冷凍機を用いた極低温・圧力下物性測定による価数揺らぎの検証 ヘリウム温度より高いところでの物性測定環境は構築できているので,より低温での測定を琉球大学で行うため,最終年度は「極低温物性測定環境(希釈冷凍機)の構築」に全力で進めたい.また,継続して微小磁化測定用圧力セルの開発とCeIrIn5の極低温度領域における圧力下熱物性測定を行う。 II.中性子回折によるCeRhIn5における反強磁性相と超伝導の相関 平成22年度までの我々のグループによるCeRhIn5の中性子回折測定の結果は、1.5GPaまでの磁気ブラッグ反射の観測に成功しており、過去の3グループの研究結果に比して、数10 倍の効率でシグナルを観測できている。さらに非整合磁気構造(Q1)が、超伝導転移温度以下では別の非整合磁気構造(Q2)に変化することを意味していて、申請者の知る限り、超伝導による影響で磁気構造が変化する例は他にはない。そこで、上記磁気構造の変化を明瞭にするために、1.3GPa~2GPa までの圧力範囲で同様な磁気ブラッグ反射のプロファイルを各圧力点で温度変化を調べて、この磁気構造の変化が磁気相に固有のものであるかどうか調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2012年度は50万円以上の備品を購入する予定は無く,希釈冷凍機温度における物性測定装置圧力容器の製作やその運転経費等,あるいは中性子散乱研究に必要な消耗品に使用する予定である.また,成果報告も予定している.
|