研究課題
価数揺らぎが量子臨界点近傍で起こることが理論的に指摘されており、高圧下における重い電子系超伝導体の量子相転移と価数ゆらぎ効果を極低温下の物性測定及び中性子散乱により明らかにしていくことが本研究の目的であり,本年度はCeIrIn5及びYbCo2Zn20とその置換系の極低温物性研究を進めた.1.「希釈冷凍機を用いた極低温・圧力下物性測定による価数揺らぎの検証」価数揺らぎによる輸送現象の何らかの異常を期待し,昨年度まで構築した高感度の交流電気抵抗法によりCeIrIn5の圧力下(8GPaまで)極低温度領域の電気抵抗を測定した.しかし,価数揺らぎに伴う異常は検出出来なかった.また,微小磁化測定用圧力セルを用いたCeIrIn5の圧力下磁化研究については.これまでのピストンシリンダー型セルよりも高圧力で研究可能な対向アンビル型圧力セルの開発を行った.CeIrIn5の圧力下磁化は2GPa程度まで測定可能となったが,現時点で10K程度以下の弱い磁化測定では信頼に足る結果は得られていない.2.「中性子回折によるCeRhIn5における反強磁性相と超伝導の相関」平成25年度において,日本原子力機構の研究用原子炉の再稼働は実現せず,極低温度における圧力下中性子回折による研究を行うことは出来なかった.なお,日本で中性子散乱研究が可能なJ-Parc施設では極低温実験は十分に出来ないことを付しておく.3.「YbCo2Zn20置換系化合物の単結晶試料育成と物性測定」Yb化合物の中で最も低い圧力で磁気秩序を示す化合物であるYbCo2Zn20に関して,適当な元素を置換することにより化学圧力で磁気秩序を実現するために,Co元素をNi元素に置換した単結晶を育成した.まだ,予備的な実験ではあるが,Ni置換とともに近藤温度が減少する傾向が見られ,圧力効果と似た振る舞いであることが分かった.
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Journal of the Korean Physical Society
巻: Vol. 62 ページ: 2016-2018
10.3938/jkps.62.2016