研究課題
充填スクッテルダイトPrRu4P12において、Prイオンの持つ4f電子と原子核スピンが超微細結合することにより複合多重項状態を形成し、それが結晶中で周期的に配列し格子を成していることを、極低温領域の比熱や磁化の測定により見出した。この新規な状態の観測は、固体物質中において初めてである。本研究では、純良単結晶試料を用いた各種物性測定により、この複合多重項が金属中でどのように振る舞うのか解明することを目指した。極低温において電子輸送効果を測定したところ、磁場方向に強く依存する特徴的な磁場依存および温度依存を観測した。この異常は、結晶中に低濃度で存在する伝導電子とこの複合多重項とが混成することにより発現した、「4f電子+伝導電子+核」の3者が関与した新しいタイプの強相関電子状態の形成を示唆している。さらに、PrイオンやTmイオンの核スピンが関与する新奇f電子状態の物性探索を、かご状物質系を中心に進め、TmT2Al20など、幾つかの候補物質を見出した。PrAu3Al7では、非クラマース2重項基底状態が核スピンと複合多重項状態を形成している可能性がある。ピーナッツカゴ状構造を持つTm6Cr4Al43では、f電子の結晶場準位構造が、擬2重項基底状態を持つことがわかった。ピーナッツカゴ状構造の中で2つのTmイオンが近接しているため、この2つがペアを組み、2量体を形成している可能性がある。今後、TmイオンをLaイオンで部分置換することにより磁気転移温度を下げて、2量体と核スピンの結合状態を調べることが可能であると考えられる。本研究がきっかけとなって、国内外で、PrやTmを含む化合物において様々な測定手法を用いた複合多重項状態の実験研究や理論研究が開始されており、今後の新たな研究領域への発展が期待される。
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http://journals.jps.jp/doi/full/10.7566/JPSJNC.8.07