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2012 年度 実施状況報告書

酸化物高温超伝導体BSCCO単結晶を用いたdドットの作製と論理回路の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23540422
研究機関大阪府立大学

研究代表者

川又 修一  大阪府立大学, 地域連携研究機構, 准教授 (50211868)

キーワード超伝導ナノ構造 / 超伝導接合 / 超伝導論理デバイス / 超伝導磁束量子 / 銅酸化物超伝導体
研究概要

本研究では、超伝導複合素子dドット、すなわち従来型金属s波超伝導体に囲まれたd波超伝導体である酸化物高温超伝導体を作製し、超伝導波動関数の位相干渉により、dドットのコーナーに自発的に発生する半磁束量子を検証する。さらに複数個のdドットを配列することにより、論理回路を構築する。
まず単一dドットの作製条件を確立する必要がある。d波超伝導体としてFZ法により作製したビスマス系酸化物高温超伝導体 BSCCO単結晶を用い、従来型超伝導体として鉛 Pb を用いて、以下手順により作成を行った。Si基板にポリイミドを用いて接着した単結晶を剥離劈開により厚さ2 μm以下にし、レジストを用いてフォトリソグラフィした後、イオンミリング装置を用いて40 μm角、基板表面からの高さ2.0 μm以下に加工した。再度レジストを用いてフォトリソグラフィした後、Pbを蒸着しリフトオフした。
作製したdドットについて、SQUID磁束計に接続する直径10 μmのピックアップ・コイルを1 μm以下の精度で走査することができる走査型SQUID顕微鏡を用いて、磁束分布の直接観測を行った。s波d波両方の超伝導体が超伝導状態となる試料温度4.0 K以下、およびd波超伝導体のみが超伝導状態でありs波超伝導体が常伝導状態となる温度12 Kで測定を行った。その結果、4.0 K以下の温度では自発的磁束が観測され、温度12 Kでは観測されなかった。したがって、観測された磁束はd波とs波の超伝導波動関数干渉効果によるもであると言える。以上により、自発的半磁束量子発生を検証することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成24年度において、単一のdドットについて磁束状態のスイッチングができるようにする予定であったが、まだスイッチング動作検証用素子の作成条件を確立できていない。dドットにおいてs波超伝導体とd波超伝導体の位相干渉による自発的半量子磁束を観測・検証することはできた。しかしながら、左上と右下コーナーでプラス+の磁束、右上と左下コーナーでマイナス-の磁束となる磁束状態(磁束状態0)と左上と右下コーナーで-の磁束、右上と左下コーナーで+の磁束となる磁束状態(磁束状態1)間のスイッチング動作を観測できていない。
この原因は、d波とs波の超伝導体界面の加工精度が不十分であることによると考えられる。またd波超伝導体をイオンミリング加工する際に、加工面にダメージが与えられ、d波とs波の超伝導接合付近で超伝導が壊れている可能性も考えられる。

今後の研究の推進方策

まず、スイッチング動作するdドット素子作製方法を確立する。最も重要であるのはd波とs波超伝導体界面の加工精度であると考えられる。BSCCO単結晶を加工する際、これまでフォトリソグラフィーおよびイオンミリング装置を利用してきた。今後、本学先端科学研究センター棟クリーンルーム・クラス1000設置の収束イオンビーム加工装置(FIB)を用いて、界面加工精度を0.1 μm程度にする。FIBでは加工精度は向上するが、高電圧で加速されたイオンビームを用いるため、加工時における結晶のダメージが大きくなる可能性がある。そこで、FIB加工後、イオンミリング装置により極力弱いビームを用いて、FIB加工の際生じるダメージ部位を取り除く。
単一のdドットについて磁束状態のスイッチングができるように、dドットの一つのコーナー周辺についてs波超伝導体の領域を狭めたものを、リフトオフ用フォトリソグラフィのマスクを設計することにより作製する。マスクは本学先端科学研究センター棟クリーンルーム・クラス10に設置されている、電子ビーム露光装置を用いて作製する。dドットでは、左上と右下コーナーでプラス+の磁束、右上と左下コーナーでマイナス-の磁束となる磁束状態(磁束状態0)と左上と右下コーナーで-の磁束、右上と左下コーナーで+の磁束となる磁束状態(磁束状態1)はエネルギーが等しく等確率で出現する。一つのコーナー周辺に電流を流すことによりこのコーナーにおける磁束の向きを反転すると、他の3つのコーナーの磁束も反転し、磁束状態0と磁束状態1のスイッチング制御が行えるようになる。走査型SQUID顕微鏡を用いた磁束分布観測により、電流によるdドット磁束状態間のスイッチングを観測し、動作を確認する。さらにこのdドットを用いたスイッチング素子を応用し、論理回路を構築する。

次年度の研究費の使用計画

dドット作製に際しd波超伝導体として用いるBSCCO単結晶の固定用にサファイア基板を購入する。
dドット周辺の磁束分布測定に用いる走査型SQUID顕微鏡を運転する際に、液体ヘリウムが必要となる。このためヘリウムガスを購入し本学設置のヘリウム液化機を用いて液体ヘリウムを用意する。
dドット磁束状態のスイッチング機構動作用に微小定電流発生器を購入する。
日本物理学会2013年秋季大会(徳島大学)および日本物理学会第69回年次大会(東海大学)にて成果報告を行うため出張および参加登録が必要となる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] BSCCO単結晶によるdドットの作製と磁束分布観測

    • 著者名/発表者名
      川又修一、河村裕一、元持祐輝、加藤勝、石田武和
    • 学会等名
      東北大学金属材料研究所共同利用研究会「ナノ構造超伝導体の磁束構造」
    • 発表場所
      東北大学 金属材料研究所 (宮城県)
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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