研究課題
磁性誘電マルチフェロイックの一つであるスピン誘導型強誘電体CuFeO2 は磁場印加や非磁性原子希釈によって誘起されるscrew磁気相において、d-p混成機構が本質と考えられている自発分極を持ち、さらに逐次磁気相転移に随伴して格子変形がおこるスピン・格子系でもあるため、多彩な交差相関物性が期待できる系である。本研究では、この系における三角格子をなすスピンが、自発電気分極の発生のみならず、[1] d-p軌道混成機構に起因する1軸応力による電気分極の制御、[2]各磁気相に固有な誘電分散、[3] 磁場掃印による螺旋磁気伝搬波数の変化に起因すると思われる電気分極の誘起、といった最近我々が見出しつつある特異な交差相関応答にどのように本質的な役割を果たしているかを明らかにすることを目的として研究を開始した。1年目は [1]つまり、自発格子ひずみと共役な一軸応力のもとで、強誘電相のscrew type磁気構造がどのようにmodifyされ、それにともない自発分極がどれだけ変化するかという言わばSpin-mediated piezoelectric effectを探査した。一軸応力下での磁気構造解析から求められた位相ずれδの100MPaまでの変化は、d-p混成機構の枠組みの中では、分極の減少を示唆するものである一方、それと反対に分極の実験値は応力のもとで増大し、d-p混成における結合定数の~15%程度の増大を示唆する結果を得た。
3: やや遅れている
本研究で掲げた研究目標[1]~[3]のうち[1]については予定のペースで進めることができたが、[2]については研究遂行に不可欠な物材機構の30Tハイブリッド強磁場施設の故障のため、[3]については、強誘電相のscrew type磁気構造の伝搬波数の磁場変化を測定するための強磁場中中性子散乱実験が可能なBENSC(ベルリン中性子散乱施設)の原子炉起動が予定より大幅に遅れたため、進んでいない。
[3]で必要な、BENSC(ベルリン中性子散乱施設)の原子炉が本年4月に再稼働し、すでに獲得していたマシンタイムで本年6月下旬に9daysの15T強磁場中中性子散乱実験を実行するようアレンジ済みであり、[2]で不可欠な30Tハイブリッド強磁場施設も再稼働の見込みであるとアナウンスがあり、これらを推進ができると考えている。
研究推進2年目にあたる24年度では、研究費を、[3]で必要な旅費、[1]の推進に必要な応力デバイス等の装置作成、およびそれを用いた実験に必要な寒剤(液体He)に主に使って行く予定である。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 340 ページ: 012062
10.1088/1742-6596/340/1/012062