研究課題
本研究では、この系における三角格子をなすスピンが、自発電気分極の発 生のみならず、[1] d-p軌道混成機構に起因する1軸応力による電気分極の制御、[2]各磁気相に固有な誘電分散、[3] 磁場掃印による 螺旋磁気伝搬波数の変化に起因すると思われる電気分極の誘起、といった最近我々が見出しつつある特異な交差相関応答にどのように 本質的な役割を果たしているかを明らかにすることを目的として研究を開始した。2年目は [1]に関連して自発的な格子変形に共役な一軸応力により磁気相転移がどのように制御できるかという視点で探査を行い論文[J.Phys.Soc.Jpn.81(2012)094710]にまとめた。[2]については、28Tの定常強磁場施設を用いることにより、基底状態からの逐次磁場誘起相転移によって現れる4 副格子(4SL)反強磁性相、5SL 相、3SL 相にわたって系統的な磁場・ 温度変化測定を行い、誘電分散は複数の緩和時間を持つデバイ型であり、その緩和時間はいわゆる Arrhenius則に従う温度変化を示し、その障壁エネルギーは固有な磁場変化をすることが判明した。[3]については、自発分極を担っている螺旋磁気構造の伝搬波数qの磁場変化が、確かに、誘電(磁気)ドメインの電場に対する応答性に本質的な役割をしていることを、磁場中の分極測定と中性子回折実験の組み合わせにより明らかにできた。[4その他」として、三方晶における電荷の蓄積に起因する分極メモリー効果のこれまでの結果をまとめて論文[J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2012) 024706]にまとめた。
2: おおむね順調に進展している
[2]については、1年目は震災等の理由で稼働していなかった28Tハイブリッド強磁場施設を使うことができ、[3]で不可欠な中性子回折実験についても、1年目は施設改修のためシャットダウンしていたドイツの中性子散乱施設HZBを用いることができ、おおむね順調に進展し始めた。
[3]については、その機構のさらなる解明のため、前回の実験で断念した、分極測定をその場で行う中性子回折実験を計画している。これにより、分極の応答の詳細な探査から得られた磁気(誘電)ドメイン壁の挙動についてのモデルを実証できると考えている。[1]については、これまで100MPaまでの応力効果を探査してきたが、1GPaまでの応力効果を探査したところ、CuFeO2の誘電率の温度変化に質的に異なる結果が得られたので、二等辺三角格子系であるCoNb2O6をモデル物質として加え、中性子回折および誘電測定により磁気(誘電)相転移への応力効果を探査する。
研究費を[3]に必要な旅費、[1]に必要な応力デバイスの装置作成、さらに実験に必要な寒剤(液体He)等に使って行く予定である。
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Journal of Physical Society of Japan
巻: 82 ページ: 024706-1~8
10.7566/JPSJ.82.024706
巻: 81 ページ: 094710-1~8
10.1143/JPSJ.81.094710