研究課題/領域番号 |
23540425
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂田 英明 東京理科大学, 理学部, 教授 (30215636)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 電子スピン共鳴 |
研究概要 |
本研究の目的は電子スピンによるトンネル電流の変調を検出することにより、実空間でのスピンの存在、配置を調べることにある。これまでにESR-STMの報告はほとんどない。これは検出すべき高周波の信号が非常に小さいという実験的問題があるためと考えられる。言い換えれば、RF信号の検出がすべてである。そこで本研究では、このような微少な高周波信号を検出可能な装置を開発して、いくつかの系に適用する。当該年度は初年度であり、装置の開発を行った。これまでに十分なシールドを施した原子分解能を有するSTMの製作を終えている。製作した装置においては、スペクトラムアナライザーによる測定により通常のSTMで見られた特定の周波数におけるノイズが消失し、またバックグラウンドレベルも減少したことを確認できた。また、安定して原子分解能が得られることも確認することができた。次年度よりこの装置を用いてスピンの検出を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度における目標は、高周波信号検出のための走査トンネル顕微鏡(STM)システムを製作することにあった。年度内に十分なシールドを施したSTMの製作が終わり、現在テスト中の段階である。これまでに1)高周波ノイズの低減の確認、2)原子分解能の確認、が終了している。このため、当該年度における目標はほぼ達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では作成したSTMを用いて、実際に電子スピンによるトンネル電流の変調を検出することを試みる。たとえば電子スピン共鳴の標準試料であるBDPA(α,γ-bisdiphenylene β-phenylallyl)を用いる。数少ない以前の報告でもこの物質が用いられているため、この物質による実験を行うことによって、以前の報告との比較が可能である。特に、実験条件の精密化を図りたい。STMの実験条件は複雑であり、例えばバイアス電圧、トンネルコンダクタンス、トンネル電流の値の最適化を行う必要があると思われる。また、印加磁場の大きさ、測定周波数レンジ等のESRに関する条件の最適化も必要である。これらのパラメーターの最適化のために、実際の観察を行い、最適化、高感度化を行う。これらの結果をふまえて、さらなる装置自身の改良の必要性が出てくる可能性も考えられる。次年度では、これらを総合して、装置としての完成度を上げて、物性研究につなげたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、該当年度に作成した装置を用いて実際に実験に移る。このため次年度において予算は実験に要する消耗品に用いる。消耗品としては寒剤(液体ヘリウム)、工作部品、電子部品、薬品を予定している。
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