研究課題
本研究は走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて単一スピンの検出をおこなうことを目指した。単一スピンは、弱い磁場中での歳差運動をしているスピン上ではトンネル電流が歳差運動の振動数で変調されるという現象を用いて、その高周波信号(~数100MHz)の空間依存性をSTMを用いることにより測定することで観察可能である。このような測定はこれまでにいくつか報告されているが、信号が小さいため測定が難しく報告例の数は少なく、データの蓄積がなされていない。そこでノイズの少ない測定系を作成し、これまでに測定が報告されている不対電子をもつ分子(BDPA)で測定を行い、さらにまだ測定例がないグラファイトのエッジに局在するエッジ状態や、磁性不純物等における単一スピンの観察を目指した。本研究ではフィルター、インピーダンス変換、プリアンプからなるノイズレベルの低い回路を作成し、また高周波信号の減衰を抑えるために探針、試料、回路間の距離を短くとったトンネル顕微鏡を作成した。この装置を用いてBDPAでは単一スピンによると思われる信号を測定することができた。しかしながら、グラファイトのエッジのようなまだ報告がなされていない他の系での観察には至らなかった。観察に至らなかった原因としては、近接したスピン間の相互作用による共鳴周波数のずれやスペクトルのブロードニング等が考えられる。そこで今後はスピンの間隔等の制御が可能な系(濃度のコントロールによる磁性不純物等)において引き続き観察を試みる予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Jornal of Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 24702-1 -4
10.7566/JPSJ.83.024702
Journal of Superconductivity and Novel Magnetism
巻: 26 ページ: 2633-2635
10.1007/s10948-013-2149-9