研究課題/領域番号 |
23540428
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
河野 昌仙 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (40370308)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | モット転移 / 高温超伝導体 / 擬ギャップ / 電荷自由度の凍結 / スピン波励起 / クラスター摂動理論 / 厳密解 / ストリング解 |
研究概要 |
厳密解と高精度シミュレーションによって得られた1次元系の結果をもとにして、2次元強相関系のモット転移近傍の電子状態を調べ、高温超伝導体で観測されている様々な異常な電子状態の振る舞いを定量的に説明するとともに、1次元系の準粒子に由来する新奇な準粒子描像によって、モット転移近傍の特徴に統一的な解釈を与えることを目的として研究を行った。平成23年度は、まず鎖間弱結合理論によって、鎖間ホッピングが1次元系の結果にどのような影響を与えるのかについて研究を行った。次に、高温超伝導体で観測されている振る舞いとの関係を明らかにするために、等方的2次元系のモデル(2次元ハバードモデル)の性質をクラスター摂動理論によって調べた。その結果、波数空間の対角線方向の性質は鎖間弱結合理論によって定性的に説明できることがわかった。特に、モット転移においては、1次元系と同様に、スピンの自由度は連続的にモット絶縁体のスピン波励起へと変化し、電荷の自由度は徐々に凍結することが明らかになった。また、高温超伝導体で観測されていた様々な異常な振る舞い(擬ギャップ、フェルミアーク、スピンノン的励起、ホロン的励起、キンク、ウォーターフォール、ギャップ内励起、ホールポケットなど)も、2次元ハバードモデルのモット転移近傍の性質として統一的に説明するができた。さらに、2次元系の上部ハバードバンドは、鎖間結合を弱くすることによってギャップを閉じることなく連続的に1次元系のものへと変化させられることから、2次元系の上部ハバードバンドも1次元系のストリング解で定義される準粒子(ダブロン)に由来するものであることがわかった。この研究成果は、2012年2月のPhysical Review Letters誌に掲載された。また、プレス発表によって、日経産業新聞、日刊工業新聞、科学新聞の記事としても掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に1次元系が弱く結合した系の性質を調べ、平成24年度に等方的2次元系の性質を調べる計画であったが、平成23年度中に平成24年度の計画まで完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、これまで得られた結果を発展させて、次近接ホッピングを含む系など、フラストレートした系におけるモット転移について研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、クラスター計算機を購入する。
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